「ハヅキさんのこと」
5月は仕事が暇でした。(仕事なのに暇なのは嫌いです。)おかげで帰宅時間が8時くらいになって早く帰れました。ここぞと本を読んでみました。6月中旬くらいまでゆるりと紹介していくには十分の本を読めました。(6月は忙しいのできっと読めない。)
ただ、この「ハヅキさんのこと」はちょっと前に読んで、図書館に返してしまって、正直どんな作品が書かれた本だったかよく思い出せないのです・・・・。
「ハヅキさんのこと」を含む、恋愛に関する短編がたくさん収められていました。川上さんの実話なのかもしれないし、そうでないのかもしれないという作品も収められています。(そうどこかで紹介されていて、確かにそうだったような気がする。)
ゆっくりしているけれど、そう長く時間が取れないときに短編はいいですよね。短編でも意味を求めて、結局何が言いたいの?と文句を言う人もいるけれど、言いたいことが別になくってもいいじゃぁないかともおもいます。雰囲気があればそれが楽しめるし、何気ないものが切り取られていたらほほぅと思う。それでいいじゃないか。意味が分からないのは嫌ですが。
「ニシノユキヒコの恋と冒険」
『ニシノユキヒコ』という一人の男性。
彼は人生を通してたくさんの女性と関わってきた。
西野君、ニシノ、ユキヒコ、ニシノくん、西野さん、幸彦・・・。
その10人の女性から見た『ニシノユキヒコ』像が描かれた、ちょっとかわった作品です。
ニシノくんは生涯、結婚せず色々な女性とつきあってきたようです。一人だけのときもあれば、二股・三股かけていることもある。ちょっと真面目に恋愛をしたい人にはお勧めできない様子の男の人です。
そのためか、たくさんの女性とつきあいますが、いつも女性のほうから去られてしまうことが多いようです。
かといって、彼はだらしのない、女たらしの、悪い男というわけではありません。心にすっと入ってきて、優しくも、少し凶暴でもある魅力のある男の人なのです。
女性達は、彼を好きでたまらないこともあれば、彼が自分を好きで、自分は距離を置こうとしていることも、互いに距離を保ってつきあっていることもあります。「本気で愛することは難しい」。最終的にはそうなってしまう人のようです。
ニシノユキヒコ自身も、姉の死から続くのか、女の人を心から愛することができない、ちょっと寂しい人だったよう。
でも、ニシノユキヒコが人を愛せなかった変な奴かといえば、荘でもないと思いました。逆にそんなに本気でひとを愛している人のほが珍しいのでは?冷めていますか(笑)
川上さんの作品はここ2年くらいで好きになりました。
仰々しい恋愛話ではなくて、ほっこりした雰囲気の話が気に入っています。
色でたとえるならば(?)
小川洋子さんがボルドーやブラウンならば、
川上弘実さんは、暖かい桃色のイメージがあります。
「蛇を踏む」
川上さんがいうところの「うそばなし」を集めた作品集。
繰り広げられる世界は、どこか現実のようで非現実的だ。
川上さんの空想の世界がこの本の中には広がっている。
**蛇を踏む』
表題作「蛇を踏む」は96年の芥川賞受賞作品。
サナダヒワ子は、仕事に行く途中、蛇を踏んでしまった。
蛇は「踏まれたので仕方ありません」と語り、溶けて女性の姿になり、ヒワ子の家に住み着くようになった。
勤め先のカナカナ堂の女主人もずっと蛇と暮らしているという。
主人は、妻のそんな姿に危機感を抱き、ヒワ子に蛇を追い出すように進める。
しかし、ヒワ子は、事態をそのままにしておく。
すると、蛇は「蛇の世界に来ないか」と執拗に誘うようになる。
解釈が難しい作品でした。蛇という気持ちの悪い存在。蛇が人間に化けるという面妖さ。蛇に絡めて考える自分の体験。なんでも知らない振りを通してきたヒワ子に襲い掛かる蛇との戦い。
不思議な雰囲気で、緊迫したまま、幕は閉じる。そこから、先のことはわからない。
**『消える』
巨大なヒカリ団地。そこは、家族ごとに家族の慣わしが色濃い場所。
父母と、二人の兄、私の5人家族。
結婚を控えた長兄は、ある日突然消えた。いるのであるが、姿は見えない。曾祖母も消えたことがあるという。日々の暮らしは何事もなかったように過ぎる。誰も兄が消えたことを気にしていない。
長兄の変わりに次兄のもとに嫁いできたヒロコは、新しい家族の風習や空気になじめず、次第に縮んでいく。
家宝のゴシキという壷は、姿を消した後も鳴き続ける。
「私」ももうじき嫁ぐことになった。体が膨張していく。長兄はそれをなでてくれる。
おかしな家族ごとにあるきまりごとや、風習、秘密。そういう家族ごとの世界が何の疑問もなく淡々と語られる。消えること、ゴシキ、結婚の風習、祭り、管狐、縮む・・・。
何かが消え、変化しても、家族はそれを気にすることなく、毎日を過ごしていく。なんだかさびしい話でもあった。
**『惜夜記(あたらよき)』
19の小さな作品からなる話。夜の世界。夜というか、まるで不思議な夢を見るような話だった。
偶数番号の話は、一応続いている。私と少女の話だ。夜の世界で流されながら、少女を追い、突き放し、争い、求める。
奇数番号はばらばらであるが、夜の世界の不思議な話ばかりである。悪夢のようなものもあれば、結局さっきのはなんだったのだろうというものもある。
じつに不可解な夢を見ている気分になる話だった。
不思議な世界感を持った作品だから、そこに意味を求めようとしたり、意味の分からない文章が並ぶのを見るのが苦手だったりするならば、この話はちょっとおもしろくないと感じてしまうかもしれない。
夢の中であるとか、空想した世界を文で形にして見ることができるというのがうらやましいと感じる。
雰囲気を楽しんだ話だった。
「パレード」
「センセイの鞄」の番外編。
初夏の昼下がり。センセイとツキコさんはそうめんの準備をして食べます。(これもまた、薬味がぱりっとしていておいしそうだ)。
それからお昼寝をして、目を覚ました二人。
「昔の話をしてください」とセンセイが言った。
ツキコさんは、小学生のころ、自分に憑いていた小さな天狗の思い出を話します。
作者の川上さんは、自分の物語が終わってしまった後、登場人物たちがその後どうなったのかに思いをはせるそうです。そして、作者も知らない、登場人物たちの日常のことを思うそうです。
ツキコさんとセンセイはどんな時間を過ごしたんだろう。
作者も知らなかった、物語の背後にある世界。
それを考えて書かれたのがこの本です。
私は、長く続いた漫画の「番外編」が好きです。終わったものの続きとか、裏の話が見れると、また彼らに会えたことにうれしくなります。
小説の番外編にあまり出会ったことがなかったので、大好きな「センセイの鞄」の番外編に出会えたことはとてもうれしかったです。
ツキコさんとセンセイがおつきあいをしてからの話は、本編にはありませんでした。たぶん、このパレードの一日は、その中の一日なのだと思います。
とても短い話でしたが、あの物語の暖かい雰囲気は十分味わうことができました。ツキコさんの天狗の話も、ちょっぴり寂しくて不思議な話でよかったです。
途中の挿絵もかわいらしくて、物語の世界にぴったりです。
ゆったりしたいときに読むと素敵な本です。
「おめでとう」
「センセイの鞄」を書いた川上さんの本を借りてみました。ほかになかったんですよね。
これは短編集です。女友達の話や、昔の恋人との話、不倫している相手との話など、これはまたゆったりとした雰囲気で描かれていました。
いまだ覚めず
どうにもこうにも
春の虫
夜の子供
天上大風
冬一日
ぽたん
川
冷たいのが好き
ばか
運命の恋人
おめでとう
私がよかったと思ったのは「どうにもこうにも」「ぽたん」。
「どうにもこうにも」は、別れた不倫相手の前の恋人である幽霊が、なぜか主人公の女性にとりついてしまったという変なお話。幽霊のマイペースさが素敵でした。
「ぽたん」は、いつもめんどりを散歩させている人と公園でおしゃべりをするという話。約束もせずになんとなく出会っているというところが、センセイ〜を思い出しました。
突飛な設定も、なんとなくな一瞬もマイペースに書かれていて、落ち着きますね。
「センセイの鞄」
すごくじんわりと心にくる大人の恋愛のお話でした。
37歳の月子は、ある日居酒屋で高校のときの国語の先生と再会します。センセイはもう70歳近く。担任ではなかったし、さほど印象があった先生ではありませんでしたが、センセイは月子の名前を知っていました。 それから、約束するわけでもなく、居酒屋の席をセンセイとともにするようになります。居酒屋だけではなく、市場やきのこ狩りに一緒に行くこともあります。
年を重ねた分、深みがあって、マイペースなセンセイ。逃げてしまった妻がいて、今は一人暮らし。国語の先生らしく、歌や言葉の知識があって、約束するときも先生という感じの話し方です。一つ一つの言葉がゆったりとしていて落ち着きます。
月子は普通のOLで、一人で生きていても大丈夫だけど、大人にはなれていないと思っているかんじの、淡々とした人です。ちょっとすねたり、不器用な人だなとおもいました。
微妙なお友達関係が続いていく中、月子に言い寄ってくる男性が現れます。年も年だし、そういう関係になってもかまわないけれど、なぜかはぐらかしてしまう月子。一人が大丈夫だったのに、さびしくて楽しくなくなった。そうして涙を流しているところにセンセイがいてくれるとほっとする。このあたりからだんだんセンセイへの月子の思いが形となって現れてきます。
先生と教え子という関係はよく驚かれます。
また、2、30歳離れた老人との結婚も驚かれます。財産狙い?なんて考えてしまわれたりするし、なかなか理解しがたい現象です。
それが一度に起こっているのがこのお話ですが、ぜんぜんいやらしさは感じられません。30代後半と70代という、父と娘のような関係の中にほっかりと浮かんだ愛にとても、ほっとします。そしてどこか少しさびしくもあります。
居酒屋の描写も素敵です。おじさんがいて、カウンターがある、ごく普通の小さな居酒屋。そこで二人の、各々飲んだり食べたりするものがとてもおいしそうです。日本酒なんて飲めないけれど、お酒を飲みたいなという気分になってしまいます。がやがやうるさいチェーン店や、格好つけた店ではなく、こんなところで飲んでみるのも大人の飲み方だな、と、すこしあこがれてみたりします。
WOWWOWでドラマ化されていたようです。
ツキコさんが小泉今日子で、センセイが柄本明。DVDにもなっているようなので、いつか見てみたいです。
川上弘美さんの文章は(多分)初めて読んだと思います。
なにがそうさせているのかは分からないけれど、とても落ち着く文章でした。また、他の作品も読んでみたいと思います。









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