「ぼんくら」
ぼんくら〈下〉

友達が絶賛していたので買ってみました。
久しぶり宮部みゆきさんの作品を読みました。
クリスティの次に好きになった作家が宮部さん。特に時代物ミステリーが大好きです。ミステリーというより、江戸町人の生活が面白いのです。
この「ぼんくら」は、先に出ている「霊験お初シリーズ」より少し後の時期の作品のようです。回向院の茂七親分が出てはこないものの高齢になられているので。お初ちゃんシリーズは紹介していませんが、ちょっと怖いスリリングな要素もあって面白い作品です。
ストーリーは同心・平四郎がとある長屋で起こる事件の真相に迫っていくもので、前半は短編風で前置きであり、後半で核心となる疑惑の出来事が見えてきます。
「ぼんくら」な同心平四郎の見廻る長屋のひとつ、通称「江戸・深川の鉄瓶長屋。そこには気丈な煮物屋のお徳をはじめとした人々が暮らしている。そんな普通の長屋で、八百屋の太助が殺された。太助の妹は殺し屋がやってきたという・・・(「殺し屋」)。それから、長屋の差配人が消え、ぽつりぽつりと、姿を消したり長屋を出て行く者が。一体長屋で何が起こっているというのか?
新しく差配になった佐吉や、佐吉を認めないお徳、新しい住人おくめ達に気をまわしているうちに、平四郎は裏で長屋を作った湊屋が鍵を握っていることにたどり着く。どうやら佐吉の母親がかかわる事件があり、それが長屋から人が出て行くことと関係しているようである。
平四郎は、手下の小平次や、甥の少年・弓之介、岡っ引きの政五郎らの力を借りながら事件の真相に近づいていく。
やはり宮部さんの時代ミステリのいいところは、その真相もさることながら、出て来る人々や街の雰囲気ですね。まるで見てきたのではと思う程の、江戸の町の描写、人の生き生きした感じがいいです。キャラクターの書き方がとても深くて、すぐに移入してしまいます。
万能で頭の切れる・・というわけではなく、めんどくさがりやの平四郎もいい味が出ていますし、美形で、賢く、なぜか物を目測する特技を持ち、なんでも測りたがる弓之助くんはかわいらしい。
「ぼんくら」の続編は「日暮し」とのこと。
同じ登場人物が出てくるのでしょうか?楽しみです。
「模倣犯 」
模倣犯、下巻は、第2部後半と、第3部が収録されています。
主犯である栗橋浩美と、罪を擦り付けられようとしていた高井和明の
死の真相。なぜ浩美まで死んでしまったのか、浩美を死に至らしめた彼
の心の落とし穴が描かれます。
そして、第3部。ピースの新たな「舞台」が始まります。
ピースの本名は、網川浩一。彼は、高井和明の無実を訴える、妹・由美
子の応援者として積極的にメディアに露出するようになる。犯人である
彼は、自ら、高井ではない共犯者がいるという自論を持ち上げて世の中
を騒がしていた。
一方で、被害者の遺族である有馬や、彼と接点を持った第一発見者の
少年・塚田真一ともコンタクトを取りはじめる。他にも、栗橋と高井犯
人説を念頭にルポを書いている前畑滋子とも対立する。
自分が作り上げた殺人舞台を、自ら解明するような立場に立ち、世の
中が騙され、自分をもてはやしている状況に有頂天になるピース。
彼の本性と事件の真実は誰の手によって、どのようにして明かされてい
くのかが見どころとなります。
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「ピース」は、当初のイメージではもっと頭のいいキャラクターでした。
でも本当は、虚栄心、誇大自己の塊。栗橋浩美よりは頭もいいし、何かに左右されたり、すがったりはしていないけれど、同じように誇大自己の塊でしかなかった。
周りの「馬鹿でおろかな」人間が、全て自分の思いどうりに動く「駒」であり、ピースはそこに舞台を用意して、シナリオを思い描く。そこに駒が思い通りに動くのを楽しむ。それが彼の犯行の全てだった。
推理小説では、たまに犯罪者だろうが、それはそれで応援したくなってしまうような、知能的で、すごい人物が出てきたりしますが、このピースはそういう類ではない。もっとも現実的な犯罪者の姿だと思いました。根拠のない「全能感」がもたらす犯罪って、最近は後を絶ちませんよね。彼らの最もタチ悪い性質を兼ね備えたのがピースだったんじゃないかと思います。
犯罪の中身は、卑怯で、愚劣。やり口も簡単。
ここまで劇場型なものはありえないけれど、実際の犯罪は汚い。推理小説で犯罪を「解く」ことを楽しみながらよんでいるけど、犯罪の怖さを改めて考えてしまう作品でした。
やっぱり、ひとりひとりへの書き込み方が半端じゃないところがすごかったです。流石宮部!
「模倣犯 」
とうとう手を出しました。長くて読む気がしなかったのですがようやく。上巻下巻あわせて1400ページくらいですか?2日で読みきりました。自分の暇さ加減に凹むばかりです。
文庫版では5巻。私の中での最長は「蒼穹の昴」だったんですが、越したと思われます。
簡単なあらすじ(上)
<第1部>
早朝、公園のゴミ箱で女性の手が発見された。一緒に失踪した女性・古川鞠子の鞄が捨てられていた。手は鞠子のものなのか?
しかし、テレビ局に一本の電話が入る。
「ハンドバックはあそこに捨てたけど、彼女は別のところに埋めてあるんです。だからあの右腕は彼女のものではないです・・・」
犯人からの電話。変声機で変えられた声。それが始まりだった。
犯人は、古川の祖父に挑発的な電話をし、弄ぶ。報道関係者に死体を捨てる場所を予告したり、殺した少女を、家族が一番ショックを受ける形で返す・・・。警察や関係者が右往左往するのを楽しむ犯人。
警察、古川の祖父、第一発見者の少年、女性ルポライターの視点から、女性連続事件が刻々と語られる。
「初ものがたり」
再読です。
このブログ上で宮部みゆきの本を紹介するのは初めてです。
でも、中高校生のときは宮部作品が好きでよく読んでいました。でも大学に入ってから減ってしまいました。
私が読んだ宮部作品はなぜか時代小説のほうばかり。
「模倣犯」など、現代が舞台の作品は「レベルセブン」「魔術はささやく」くらいで読んでいないんですねぇ。宮部さんの描く、江戸の町が、人がとても生き生きしていて大好きなんです。すごくソフトで読みやすい。
題名通り、蕪、白魚、鰹、柿、鮭、桜といった「初もの」が絡む謎の事件が並んでいます。
本所深川一体をあずかる岡っ引きの茂七、通称「回向院の旦那」が中心となり、江戸で起こる謎の事件を追っていくという短編集です。江戸の町人の生活が生き生きとしていて、事件も江戸時代ならではの事情を含ませた奥深いものです。
ところが、この話を読んで、誰もが持つ感想は、おそらく「美味しそう!」でしょう。
江戸の町には珍しく、夜中まで屋台を開いている稲荷寿司屋。
茂七が通うこの屋台で出される料理。稲荷寿司だけではなく、椀物、酒、菓子まで出してしまう屋台で、しかもものすごくうまい。稲荷寿司、味噌汁、すいとん、白魚蒲鉾、桜餅、熱燗・・・。読んでいるだけで、すごく食べてみたくなります。
新しくできたこの屋台であるが、近くの悪党どもがそこだけは近寄らず、一目置いている。そして、店の親父も正体不明である。茂七は武士だったのではないかと踏んでいるが、どうにもわからない。この稲荷寿司屋の親父の謎も、短編全てを通してからんでいておもしろい。
この初ものがたりは、この作品の中で話が完結していない。宮部さんは続き物として書いていたようだけれど、掲載誌の廃刊でそれがストップしてしまったそうです。いつか続編が書かれることを切望するばかりですね。
<収録作>
お勢殺し
白魚の目
鰹千両
太郎柿次郎柿
凍る月
遺恨の桜








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