「絵描きの植田さん」
寂しさで閉ざした人の心を溶かす、雪国のものがたり。
いしいしんじさんの作品で「絵描きの植田さん」の文庫版です。
タイトルと同じく、表紙や、最後の挿絵は画家の植田真さんによるものです。
繊細で暖かく、かわいらしい絵なので、女性が好きなのではないでしょうか。
この植田さんとは違いますが、主人公は絵描きの植田さんです。
彼は火事(?)で妻を亡くし、その事故で植田さん自身も耳がほとんど聞こえなくなっています。とある雪国の「湖の向こう側」に移り住んで、ほそぼそと絵を描きながら暮らしています。
その小さな町に、湖のあちら側から、親子が二人移り住んできます。凍った湖を歩いて渡ってきたのは、母親のイルマと娘のメリでした。
妻と聴覚を失って以来、ふさぎ込んだり、他人を拒んだりしたわけではないけれど、植田さんの心はしぃんとしていて、閉ざされていました。それは絵にも表れていました。しかし、メリが遊びに来るようになってから変わります。鳥や生物を愛し、勇敢で利発なメリ。植田さんの心は徐々に溶かされ、忘れていた世界をとりもどします。
やさしい植田さん、利発なメリ、元スケート選手の定食屋のおばさんや、武骨だけれどいい人であるオシダさんなど、出てくる人が素朴で嫌なところがないところがいい。厳しく危険を孕む一方で、雪国の美しい光景や動物たちの描写がとても綺麗で、植田さんの「絵」も暖かい。雪に飲まれたメリの回復を祈って植田さんが描いた、小さな町の冬の情景は、美しい景色と、鳥や鹿などの動物と、遊びまわる女の子たちという、綺麗で楽しい絵です。植田真さんの絵で、最後に載っています。
たまにはこういう複雑でもなんでもない、暖かい話もいいですね。
クリスマスシーズンや冬にぴったりの素敵な本です。
いしい しんじ, 植田 真 / 新潮社(2007/11)
Amazonランキング:96777位
Amazonおすすめ度:
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いしいしんじさんの作品で「絵描きの植田さん」の文庫版です。
タイトルと同じく、表紙や、最後の挿絵は画家の植田真さんによるものです。
繊細で暖かく、かわいらしい絵なので、女性が好きなのではないでしょうか。
この植田さんとは違いますが、主人公は絵描きの植田さんです。
彼は火事(?)で妻を亡くし、その事故で植田さん自身も耳がほとんど聞こえなくなっています。とある雪国の「湖の向こう側」に移り住んで、ほそぼそと絵を描きながら暮らしています。
その小さな町に、湖のあちら側から、親子が二人移り住んできます。凍った湖を歩いて渡ってきたのは、母親のイルマと娘のメリでした。
妻と聴覚を失って以来、ふさぎ込んだり、他人を拒んだりしたわけではないけれど、植田さんの心はしぃんとしていて、閉ざされていました。それは絵にも表れていました。しかし、メリが遊びに来るようになってから変わります。鳥や生物を愛し、勇敢で利発なメリ。植田さんの心は徐々に溶かされ、忘れていた世界をとりもどします。
やさしい植田さん、利発なメリ、元スケート選手の定食屋のおばさんや、武骨だけれどいい人であるオシダさんなど、出てくる人が素朴で嫌なところがないところがいい。厳しく危険を孕む一方で、雪国の美しい光景や動物たちの描写がとても綺麗で、植田さんの「絵」も暖かい。雪に飲まれたメリの回復を祈って植田さんが描いた、小さな町の冬の情景は、美しい景色と、鳥や鹿などの動物と、遊びまわる女の子たちという、綺麗で楽しい絵です。植田真さんの絵で、最後に載っています。
たまにはこういう複雑でもなんでもない、暖かい話もいいですね。
クリスマスシーズンや冬にぴったりの素敵な本です。
「雪屋のロッスさん」
「ダ・ヴィンチ」の広告で見てすごく気になっていた本です。
素朴でかわいらしい表紙が気に入って購入しました。
30のさまざまな職や役割を持った人やものたちの、短いお話がつまった暖かい本です。
切り取られた人たちのチョイスがなんとも面白いんです。
「大泥棒の前田さん」「象使いのアミタラさん」「ポリバケツの青木青兵」・・・。
図書館司書や風呂屋のように日本人で、一般的な職業の人もいれば、雪屋やパズル製作者のように外国人もいるし、ポリバケツや豚なんかもいます。結構現実的な設定もあれば、すこしありえない、不思議な世界を持った設定のときもあります。
ひとつひとつの話は、短い中にもドラマがつまっています。
その人の持つ悲しみや寂しさ、苦労が垣間見えていたり、
強い信念があったりします。
それがやんわりとした調子で表現されています。
自分のいる国や時代であっても、遠い国や時間のように感じて、ゆったりしている、いしいさんのお話はとても落ち着きますね。
大人向けの童話といったかんじで、せかせか忙しい毎日にちょっとずつ読んでみるのにちょうどいいと思います。
自分はここにならべられるようなストーリーを持った人間になれるでしょうか?
「麦ふみクーツェ」
はじめて,いしいしんじさんの作品を読みました。
外国の童話みたいな不思議な世界の話でした。こども向けかと思いましたが、むしろ大人が読んだほうがこの世界観を面白いと感じられるかもしれません。
主人公の「ねこ」と呼ばれる男の子は、小学生なのに大人よりもはるかに大きい身体を持ち、学校では友達もおらず、自分に非常におおきな劣等感を抱いた男の子です。彼の父親は数学の先生ですが、能力以上の問題をずっと取り組み続け、数字に幻想を抱く変わった人。おじいちゃんは、町の吹奏楽団を率いる打楽器奏者で、音楽にとことん厳しい人物です。ねこはおじいちゃんにみっちり音楽を教えられて生きています。
彼には母親がいません。ねこは自分が母親のおなかを破って生まれたせいで、母親が死んでしまったのだと罪の意識にさいなまれています。
そんな彼の、心の支えのような存在が「クーツェ」です。
ある晩現れた謎の小人「クーツェ」はいつも「とん、たたん」と一定のリズムを刻みながら黄色い大地を踏みしめています。ねこにはふと瞬間にクーツェが現れたり、頭の中で足ふみの音だけが聞こえたりするのです。
話は、ねこが、吹奏楽の指揮者を目指しながら、自分の劣等感を乗り越えていく流れになっています。






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