「大きな熊が来る前に、おやすみ。」
島本 理生 / 新潮社(2007/03)
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家(部屋)で二人で過ごすことをテーマに書かれたこの3編の恋愛小説。
最初の2編はかなりドキッとさせられた。淡々と続く文章の中に突如として現れる衝撃。
幸福もしくは前向きな恋愛や、哀しい失恋などとも全然違う。
やりきれない、煮え切らない終わり方をする恋愛小説。
下手に幸せなのより、根暗な私はこういうダークな話が好きです。
1篇目は、同棲する恋人が見せた凶暴さと弱さの中に、苦手だった父親の姿を見てしまい、深みにはまっていく恋愛に不安を抱いている女の子の話。2編目は、地味で真面目な女の子が、自分が苦手とする、周囲に気を使わず、お金持ちの苦労知らずの男の子に恋をして、傷ばかり増やしていく話。こう書くと微妙です。読んでみてください。
最後の1編は、前の2編と同じように、昔の恋愛で傷を負った女の子の話。その傷の原因はなかなか重く、昔の後輩と出会い、いい感じにはなるのですが、恋愛に踏み出すのが怖い彼女。しかし、数日家で愛猫と彼と一緒に過ごし、人生に対してもまっすぐで、やさしい彼に心を溶かされていく。そんな幸せな終わり方をする話です。
amazonなどの感想を見ると、苦手な方が多かったですが、短編でドキィッとなることは少ないのですごい作品かなと思います(DVとか出てきたら当たり前かな。)。それでなくとも、不安とか、正反対の人間に対する嫌悪と裏腹の憧れとかの表現がうまくておもしろいと思います。
「リトル・バイ・リトル」
島本 理生 / 講談社(2006/01)
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自分と同じ年齢の小説家がいるということが凄く新鮮に思える。島本理生さん、綿矢りささんの二人は私と同じ学年に当たる小説家だ。24歳というと、若いような気でいるけれど、結構若いともいえない。プロ?アマ問わず、たくさん小説を書いている人はいるわけで、24歳の作家がいても何の不思議もない。でも、芥川賞などに何度もノミネートされたり、受賞されるような殊勝な人がいるというのは、やっぱり凄いなと思うし、うらやましい。
自分も何か書く能力があればいいのにとよく思うけれど、到底無理。なんにも浮かばないし、書いたら目も当てられないような陳腐なものが出来上がるに違いない。なんてことない人々の日常会話を書いてあるだけでも、彼女達の書く文章は深いのだ。何人もの人間の性格と人生とコミュニケーションを作り出せる、それを物語りにできる、その能力は羨望の的だ。
この本の主人公ふみは、高校卒業後アルバイトをしながら、母親と、父親違いの妹と3人で暮らしている。ふみの人間関係はいたってシンプルだ。あまり多くの人と関わるのが苦手な人である。そんな彼女に、周というボーイフレンドができる。キックボクシングをやっているひたむきで、優しい男の子である。周との出会いや、彼のお姉さん、習字の柳先生との関わりの中で、いなくなった父親に対するふんぎりをつけて進んでいく様子が描かれている作品。
表題の「リトル・バイ・リトル」、すこしずつというのがしっくりくる。
出てくる人々みんな、どこか好感が持てるのもよかった。悪人も、ひどい怠け者も、偏屈もいない。かといって殊勝な人たちでもないけれど。
ひとつ前に読んだ柴崎友香さんの作品もそうですが、褒め称えて、心を突き動かされ、感嘆し、ドキドキしてしまうようなドラマチックな話じゃなく、こういう現代の普通の若者の一面を書く作品もなかなかおもしろいなと最近思います。
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