☆4040の本棚☆ 文庫とミステリに偏っている私的な読んだ本のおぼえ書きです。
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2009.02
22
(Sun)

「凸凹デイズ」 


山本 幸久
Amazonランキング:214380位
Amazonおすすめ度:



 仕事の目標を「やりがい」と答える人も多い。「やりがい」と一言にいえど、大きな仕事に挑むことに感じる人もいれば、楽しく好きな仕事をすることに見出す人もいる。この話ではより大きな仕事に挑もうとする人、小さな仕事に、自分の才能に悩む人、小さな仕事でも役目を果たすことに喜びを感じる人、さまざまな働く人が出てくる。その中でも、仲間と衝突したり団結したりしながら仕事をしていくことのよさを描いている。

 主人公の凪海 はたった3人のデザイン事務所「凹組(ぼこぐみ)」で、スーパーのチラシやエロ雑誌のレイアウトなどをひどく安い給料で働いている。遊園地の再建のプレゼンで、凪海のキャラクターが採用され、凪海は「QQQ」というデザイン事務所に出向という形で、キャラクターデザインの仕事に取り掛かる。「QQQ」は大きな賞も受賞し、雑誌に出るほどの有名な事務所である。
 決して胸をはれない価格も安い仕事と、おしゃれで注目の事務所での有名な仕事どちらがいいのか。子供のころから描いてきたキャラクターが仕事に使われるようになったとたん、生き生きと描けなくなる。凪海は仕事の悩みと、歓迎されないQQQでの人間関係の悩みにぶちあたる。
 
 この話で一番大きいのは「醐宮」の存在である。醐宮は「QQQ」の代表で、以前「凹組」から大きな仕事を求めて凹組を離れた過去がある女性。醐宮はデザイン事務所を束ねるも、すでに自らデザインを手がけるよりも「営業」としての役割を持つバリバリ働く。その仕事スタイルは、体でとったであるとか、他人の成果を自分のものにしたと揶揄され風当たりも強い。実際、「凹組」とも確執もある。凪海の視点の話では、自分の利益になるものは、なんでも奪い取っていく強烈な女性に見える。
 一方で、10年前の「大滝」視点の話では、勤めているデザイン事務所から独立し、仲間と新しい目標に向かう、大滝・黒川・醐宮が描かれている。天才の黒川と、デザインもでき営業にもなる醐宮、そして二人に比べ凡庸であることに妬み、悩む大滝がいる。 醐宮はだんだん大きな仕事を目指して、他の二人と目指す目標にズレが生じるようになる。

 凪海はQQQに出向している間に、大滝と黒川という仲間と仕事をしていくことにやりがいがあったということに気がついた。一方、醐宮については強引だけれど、目標を高く持ちまい進する彼女が嫌いではなかった。醐宮の「寂しさ」も理解した凪海は、大滝・黒川と醐宮の仲を回復させ、目標を低く置いてしまっている「凹組」に喝を入れる役目を果たす。

 番外編の凸凹ホリデーでは、凹組とQQQに仕事を回す、代理店営業の盤井田君視点の話である。醐宮が戻り、徐々に仕事を増やしていく凹組。その姿は楽しそうで、生き生きとしていて頼もしげだ。サラリーマンの彼には、喧嘩したり、ときには強い結束を見せる凹組をうらやましく思う話になっている。

 私は遠からずな業界で働いていますが、デザインという仕事はセンスや才能といった、数字では測れない難しい部分を持っている仕事です。自社のデザインの人たちは、印刷会社という中途半端な組織にいるため、組版とデザインのどちらつかずになり悩みが多そうです。また、とあるデザイン会社では、文字ひとつの配置にも気を使い、大きなプロジェクトも営業畑では気づけないところまで考えをめぐらせるプロ魂を見ました。そんな自分の仕事に近いという点からもこの本は楽しめました。醐宮に注目してしまったのは、営業をしているからかもしれません。デザイナの卵だったら凪海に注目していたんだろうなと思います。
 仕事は人とのコミュニケーションや協力や信頼が一番だなと最近よく思います。人をないがしろにしてしまっては、仕事もうまくいかないし、精神的にもつらいことが増えるばかりです。仕事のやりがいだけ、給料だけでは仕事は続けられない。社内の人間関係については恵まれた環境にいるので(あとはお客さんとうまくいけば問題なしだな)、今の仕事はなんだかんだややこしくなっても、まだやめられないなと思います。
 
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2009.02
07
(Sat)

私という運命について 


白石 一文
Amazonランキング:57579位
Amazonおすすめ度:



 生きていくのはたくさんの選択の連続。自分で選び取るもの、周りによって決まっていくもの。特に生まれること自体もそうで、幼いころは自分で選べないことのほうが多いけれど、成長するにつれて、自分で選び取ることもできる。運命とはどこか仰々しい響きがする。起こった後に運命だと感じた途端に、その人の中で事象が運命に変わるような気がする。それは、自分が選択した場面、選択させられた、決まってしまったその瞬間、出会った瞬間のこと、感覚が、パッと鮮やかに蘇る少し不思議な感覚。その時はなんでもなかった場面が後々になってありありと思い出されて重要な意味を持ち出したり、さまざまな出来事がつながって今になったと実感できたとき。そのとき感じる不思議な感覚が「運命を感じる」につながっている気がする。

 この話は一人の女性の10年を描いた長編小説で、主人公の亜紀が出会う選択の場面と、運命を感じるような出来事について描かれている。29歳の亜紀は男女雇用機会均等法が施行されたころに、メーカーの総合職として働いているキャリアウーマンの走りだ。序盤は、彼女は女性の人生の選択と言われるものを悉く「先延ばし」にしてしまう。それは結婚を選ばない選択ではなく、まさに「先延ばし」「逃げ」てしまった状態だった。 29歳のときは、求婚を断った男性が後輩と結婚してしまう。 32歳のときは、余儀なくされた転勤先でできた恋人ともとあるきっかけで別れることになる。
 そんな彼女に人生を考えさせるのが、元恋人の母親からの手紙であり、若くして命を落とした弟の嫁であり、自分たちの運命を決めつけて不安定に生きる若い友人カップルである。あの時結婚を選んでいたら・・・という悔恨や、自分が持ち得なかった他人の生きる信念に彼女は圧倒される。
 37歳になった亜紀は、思いがけず元恋人に再会する。彼は病気に倒れたあと、妻と別れていた。

 ラストは多少出来すぎかと思えるほど、不幸と幸福、運命のオンパレードが待ち受けている。しかし彼女は、ようやく自分に素直な選択をしたため、苦労や悲しみはあるにしても充実した人生をおくるだろうなと感じるラストであった。

 白石さんは、強がってばかりいられないエリートの人生を描くのが得意なのだろうか?「僕の中の壊れていない部分」もエリートだったし、ほかの本も背表紙を見る限りエリートが主人公だった気がする。
 「婚活」が流行ったり、一生仕事に捧げる女性もいる。中年女性が活気付いていたり、なかなか女性はにぎやかである。ただ、常にどこかによりいい選択肢がないか、見落としてしまったのではないかとそわそわビクビクしてしまっている感じがしないでもない。かといって何もしないと40くらいになってショックを受けたり、「失敗だ!」とならないこともない。あせらないけれど無為に過ごさないというさじ加減は難しい。
2009.02
03
(Tue)

「犬神博士 」 


夢野 久作
Amazonランキング:12776位
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 基本的に、こんなブログを作っておきながら、自分で本を選んでなかなか冒険することがないけれど、今年は、ほかの人の紹介している本も読んでみたいと思っています。今回は、森見登美彦さんが角川文庫「今月の文庫編集長」で紹介していた1冊です。
 
 夢野久作さんは「ドグラ・マグラ」が有名ですが、いつかは・・・と思いつつ、まだ読んでいません。奇異な幻想小説なのだろうと思います。このお話は奇異ではありますが、昭和の貧しい人々の力が溢れたテンポのよい冒険譚でした。

 犬神博士と呼ばれる浮浪者の老人が語りだす、幼いころの驚愕の冒険。
 昭和のはじめの博多。チイと呼ばれるその少年は、大道芸の男女とともに旅をしている。少女の格好で踊り、ときには「風俗壊乱踊り」を踊らされ、今で言う虐待を受け、おなかをすかせていたいた。しかし、反抗心を抱きつつも、彼にとっては二人が親であり、ほかに信じれるものはいないのであった。

 風俗踊りによるわいせつ罪で警察に捕まったチイと男親。踊りを見初められ、警察と芸者によって男親と引き離されようとしたチイは、親と離れたくないと訴える。ひどい親でも慕い続けるその態度に、警察ら大人たちは心を打たれ、はたまた福岡県知事までもが素晴らしい「忠義」を持った少年であると保護を申し出る。
 そこから転がりだす冒険は、博打に敗れて窮地に陥る二親を助ける冒険と、その親と離別し、殺人の疑いをかけられ、気づけば炭坑の利権争いの重要人物としてひっぱりだこになる冒険へとつながっていく。
 
 このチイの設定が面白い。虐待を受けているがまっすぐな心を持つ純粋な子どもでもあり、ならずものの情けない二親から受けた教育のみであるため社会的な常識が欠落している子どもでもある(最初は男と女の区別もついていなかった)。頭がよく、正義感に溢れ曲がったことが嫌いで、自分の利益ばかり考えて動く大人の行動をまっすぐに否定する。
  大人になったチイは「犬神博士」として怪しい人物になっているようである。ぼろぼろのマントの下は全裸で、髪もひげもボウボウの浮浪者である。ただ物知りで占いなどの不思議な力もあるようだ。彼にとっては「普通の人々」の方がよっぽど生きにくい生き方をする変人たちである。チイは幼いながらに社会の通る道を体現しているようでもあり、大人が勝手にそう思っただけでただの子供なのかもしれない。ただの乞食か神童か、判断しがたい。

 福岡県知事のお気に入りになったチイを、炭坑の利権のために知事の派閥と右翼が取り合い、チイはその中を自分の信念に基づいて自由に行動して余計に混乱を招き、大人たちの事態がとんでもないことになっていく様が滑稽です。
 哀れな子どもや、官憲の不正や、社会のねじれを描いたようでもあり、ただ、それを滑稽に描いてあざ笑うかのようなお話のようでもあり、荒削りの博多弁に、差別の根強い昭和初めの貧民や民衆たちの力が溢れた活気のある話でもあります。はじめて読むタイプの話でした。
  
2008.09
10
(Wed)

「お伽草紙」 

こんな楽しそうな太宰治なら誰が読んでも面白いと思う


太宰 治
Amazonランキング:31960位
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 最近太宰治の本が、デスノートの漫画家などの絵を使った装丁で売られていた。はたして、古典を手に取るきっかけになっているのかよくわからないところだ。太宰治で読んだことがあるのは、「走れメロス」と「人間失格」と、この「お伽草紙」だけである。メロスはいいとして、「人間失格」は暗かったという印象しか覚えておらず、(高校の冬休みの読書感想文のテーマに選んでしまい、読みながら年を越した記憶がある)、他の作品にもなかなか手が伸びない一因となっているような気がする。

 さて、この「お伽草紙」は、何故購入したのか分からないけれど、版は平成6年であるため、10年以上前に買ったのではないかと推測する。中学生くらいだったはずだ。読む本がなくなったため、本棚を見渡してこの本を選んだ。再読してみたけれど、コレがなかなか面白いのだ。

 「お伽草紙」は言わずと知れた、日本の昔話の原点となっている古典作品である。太宰治は、この中から、「瘤取り」「浦島さん」「カチカチ山」「舌切り雀」を選び、大人の視点で冷静に各物語に「つっこみ」を入れながら、独自の話の展開を書いている。ちなみに「桃太郎」については、「日本一」をけなすことはできないとして、書くのを辞退されている(笑)。
 「カチカチ山」を例に挙げると、「婆汁」を作る罪もたいがいのものであるが、いさぎよい敵討ちではなく嬲り殺していくとは子供でも不審を抱くのではないか、殺し方が男らしくないのは、兎が女だからであり、愚鈍な狸に思いを寄せられた女の兎であるからこその残酷さに違いない・・・・・というようななんだかもっともらしい解釈をしながら、独特の話を作っていくから面白い。なぜ狸が殺されなければならなかったのか、最終的に行き着いた結論について、是非読んでもらいたい。

 お伽草紙のほかに、「聊斎志異」からヒントを得た「清貧譚」という話や、「新釈諸国噺」として西鶴の作品を骨子に太宰治なりのストーリーに仕立てた短編がたくさん収録されている。
 色々な出演者が、ちょっと屁理屈やであることや、途中で作者の呟きが現れたりする。人間の滑稽さが浮きだっていて非常におもしろく、実は深いような気がする。

 教科書に載っていて、「人間失格」のような重たい作品のイメージが強い太宰治であるけれど、この本にいたっては、楽しそうに文章が書かれており、読みやすくて面白い。これを機に、一冊くらいは代表作を何か読んでみてもいいかもしれない。
2008.03
08
(Sat)

「自由死刑」 

1週間後に自殺することを決めた男のうまくいかない1週間


島田 雅彦
Amazonランキング:563位
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 主人公・喜多善男は、1週間後の金曜日に自由死刑を執行することに決めた。つまり自殺である。借金苦や精神的に参っているわけではないが、漠然と昔から自分の人生には絶望しか感じてこなかった。それだけだ。
 1週間、酒池肉林を味わおうかと決めた喜多であるが、そこには次々と「邪魔」が入る。
最初は若い女と知り合い、酒や性を楽しむ程度であったが、徐々に、喜多の死をめぐって、様々な人間の思惑が交差し始める。
死ぬと知れたことで生命保険や臓器売買をかけられる。
憧れだったアイドルとの出会えたが、なぜか逃避行に出る羽目になる。
挙句の果てに殺し屋に狙われる。
 地味でお人好しの彼であるが、死んでしまうと割りきっているためどこか他人事である。
気になるのは「無事に」死ぬことができるのか。お願いだから邪魔せずに死なせて欲しい。
死にたい男をめぐって周囲を出会うこともなかったような人間が右往左往し、喜多はドラマティックな最後の一週間をすごすことになる。

 まず面白いのは、前半(Fridayから最後のFriday)までの騒動だ。様々な人間が現れ、騒動を起こしていく。喜多は巻き込まれつつも、いつもうまい具合に自分のペースに戻していく。
 喜多を邪魔するのは大きくいえば2人である。1人は八代。裏家業で稼ぐ怪しい男で、偶然喜多が自殺志願であることを知り、漬け込み始める。いけすかない彼であるが、読者にとっては爽快で驚きな羽目に陥ることになる。もう一人は、アイドル宵町しのぶ。彼女は、現状から逃げ出したくて、この風変わりな喜多という男と出会う。聖書をよりどころとしている彼女は、喜多と行動しながらなんとか死を諦めさせようとする。
 ほかにも、喜多が軽く復讐めいたものをして驚かせたいと思っていた、元恋人のみずほや、夫がなくなったことで呆け始めた喜多の母親、外科医で殺し屋の男などが出てくる。

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2008.01
11
(Fri)

「淀どの日記」 

秀吉の側室・茶々の凛とした生涯を描いた1作。


井上 靖 / 角川書店(2007/11)
Amazonランキング:158235位
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 豊臣秀吉の側室・茶々の生涯を描いた、井上靖さんの小説です。
この本が2008年最初の読書となりました。同期から借りました。
表紙は、映画「茶々-天涯の貴妃(おんな)-」の主人公・和央ようかさんとのこと。
この映画の原作になります。

 織田信長の妹・お市の娘として生まれ、秀吉のせいで城を追われ、家族を悉く失ってきたともいえる茶々が嫁いだのは、その秀吉である。憎むべき相手と婚姻ということで自害も考えるが、どんな境遇でも生きようと決心し側室に上がる。この作品の茶々は、目の前で戦に負けてきた人ばかり見てきた彼女にとって、戦に勝ち続ける秀吉の姿のなかに憎しみとは違う感情を持っていたと解釈している。また、後半では、秀吉の死後、最後まで息子の秀頼を頂点に立たせたいと守り、尽力する母親の茶々の姿が描かれている。

 あまり歴史小説を読まないため、秀吉関連を読むのも初めて。他の作品で茶々がどういう人物で描かれているのかはわからない。秀吉で思い出すのは、小6のとき見た大河ドラマの「秀吉」くらい(笑)。竹中直人の濃い秀吉、北の政所・ねねは沢口靖子、茶々は松たか子。そのときはおね(ねね)のほうがヒロインで、穏やかですごくいい人物像だった。当然ながらねねびいきだったので、側室になって子どもまで産んだ若い茶々は、ねねの邪魔者と映っていて、嫌いだった。
 本作では逆に、ねね・北政所は冷たい雰囲気の描かれ方で、ドラマのイメージを持っていたので、残念に感じた。しかし、ドラマは秀吉とねねを中心に描かれたものであったし、秀吉の死後は描かれていない。秀吉の死後、大坂城で自害なんていう壮絶な最期を茶々が遂げていたなんて知らなかった。秀吉の世継ぎをトップに立たせようと最後まで踏ん張って死んでしまった茶々と、最後は家康とうまくとりもって、高台院として生きたねね。こう見ると、ねねもドラマのような穏やかな人物ではないかもしれない。作品によって人柄が変わってくるところも歴史小説では面白いと思う。
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2007.12
14
(Fri)

「嫌われ松子の一生」 

存在を知らされていなかった松子という叔母。殺された彼女の過去を探っていくと、失踪、水商売、覚せい剤、そして殺人…ととんでもない不幸な過去が隠されていた。


山田 宗樹 / 幻冬舎(2003/01)
Amazonランキング:216657位
Amazonおすすめ度:



 どこで人生の階段を踏み外すか分からない、という表現があるけれど、普通の人はそういう危機感を持っていないと思う。多感で悪ぶりはじめた子どもに対してならそういう気持ちも起こるかもしれないけれど、自分はきっと悪い方向に足を踏み入れていくだろうなんて一般人は思わないような気がする。しかし、不幸だったらどうだろうか。自分に不幸や災難が降りかかることは、自分で避けようと思っても避けられない。事故や犯罪に巻き込まれることが凄く低い確立ではあるが、ないとはいえない。でも、これもあまり過敏だと生活できないので、そう気にしている人はいない。
 親の期待を裏切らないよう、真面目に勉強し、国立大に進み、中学教諭になった松子。松子もよもや自分が刑務所に入り、最後には殺されてしまうなんて考えもしなかっただろう。 松子の人生の転落は、不幸が引き金だった。他人によって陥れられた災難に、自分の弱さがあいまって、どんどん、深みにはまってしまっている。災難が引き金となったとすると、自分にも起こりかねない。すごく恐ろしい。松子のような人生は十分避けたいところだ。それが読んでいて悲惨な気持ちにならずにテンポよく読み終えてしまったのが不思議な本だった。

 この作品は、叔母の松子の知り合いだった人物に次々と出会い、松子のことを聞き出していく大学生の笙と、松子自身の視点で松子の人生が語られる。

 東京の大学生の川尻笙のもとへ、福岡から父親が急に訪ねてきた。笙は、自分には松子という、30年くらい前に蒸発した叔母がいたということを知る。父親は、その叔母(姉)が殺されため、仕方なく遺体を引き取りにきたのだという。その存在を知らなかった笙は、自分の叔母である人物が、何者かに暴行の末殺害されたという事実にショックを受ける。
 妙に松子のことを気にする恋人の明日香に押され、笙は松子のことを調べることにする。
 松子の元生徒だったという龍洋一や、親友だったという沢村めぐみなどに出会い、話を聞いていくうちに、松子がものすごい人生を送っていたことを知る。
 中学教師を窃盗の罪で辞して蒸発し、その後中洲でソープ嬢になり、覚せい剤と殺人で服役。その後美容師となるも再び逮捕され、最後はみすぼらしい引きこもりの生活をし、53歳で殺害されて人生を終えたという人生だった。男と男を渡り歩き、堕落して行ったような彼女の人生。自分の父親や親戚、晩年の松子を知る人物達は松子を嫌っていた。しかし、笙には松子の人生が、不器用で愛する人を求めてまっすぐにぶっかっていった、一所懸命な人生だったのではと感じる。
 そして、松子の人生を知り終えた彼は、今度は明日香の決意と向き合うことになる。(これはまた別のお話があるそう) 
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2007.10
25
(Thu)

松尾 スズキ / 文藝春秋(2007/08)
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 オーバードーズで精神病院に送り込まれた明日香の、自分と向き合う怒涛の14日間。


 劇団・大人計画の松尾スズキ氏による小説です。芥川賞候補作でもあったそうです。内田有紀主演で映画かもされるようです。(最近見もしないのにエンターテイメント関係のよく読んでるなぁ)

 薬の大量摂取(オーバードーズ)で死にかけた明日香が担ぎ込まれたのは精神病院。目を覚ましたら手足を拘束され、「クワイエットルーム」という特別病室に入れられていた。冷たいナースに、拒食・過食・自傷などの複雑な状態の患者達。私は正常でこんなところにいる必要はない!という明日香だが、恋人の鉄夫に迎えに来てもらえず、しばらく入院する羽目に。

 奇想天外な発想をする松尾スズキ氏のことである。冒頭の明日香の夢がはちゃめちゃだったり、精神的に弱い人達の話であるので、どんなエキセントリックな話になるのかと不安な読み出しだったのですが、全然違いました。終わり方がすっきりした決別というかんじで、とても気持ちのよい話でした。
 
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2007.08
23
(Thu)

「日本の昔話」 


柳田 国男 / 新潮社(1983/01)
Amazonランキング:22274位
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 日本民俗学の祖といわれる柳田國男が全国から収集した日本の昔話が収められた一冊。その時代に生きていなくても、懐かしさを感じる本です。

 「桃太郎」や「つるの恩返し」といった有名な昔話でもなく、御伽草子とかにも載っていなさそうな、各地の人々の間で語り継がれてきた話が何篇も集められています。
 鳥や狐、狸などの動物が出てくるもの、貧乏人が長者になるもの、鬼や山姥などの妖しい者がでてくるもの…。滑稽なもの、どこか教訓じみたもの、小さいころアニメ『日本むかしばなし』で見たような矮小で懐かしい話ばかり。

 東北と九州と土地が離れていても似た「型」の話があるというのも不思議です。これは日本にとどまらず、世界中のむかしばなしや伝説が似た型を持っていると聞いたことがあります。例えば、「海の水はなぜ鹹い」という1話がありますが、これは「北欧神話」に同じような話があったのを読んだことがあり、驚きました。
 昔からグリム童話(マイナーなもの)北欧神話やらゲルマン神話、ギリシア神話などの素朴なむかしばなしが大好きで、久しぶりにそういう本を手にとって見ました。とりあえずわが国日本から。

 
2007.08
13
(Mon)

「大盗禅師」 


司馬 遼太郎 / 文藝春秋(2003/02)
Amazonランキング:39624位
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 徳川幕府は3代目・家光の時代。浪人の浦安仙八が大盗禅師という謎の僧と出会い、徳川幕府転覆を画策する一味に入り暗躍していく。謀反をめぐった幻想的な話です。

 司馬遼太郎さんの作品をはじめて読みました。司馬遼太郎の全集に収録されることのなかった作品とのことで、あまりメジャーな作品ではないようです。もしかしたらビギナーが読むような話ではなかったのかもしれません。でも、幻想的でおもしろい作品でした。初期の徳川幕府についてかかれたものを読むのがはじめてだったので、その辺の歴史背景もおもしろく読めました。
 司馬さんの作品はたくさんあるのでどれから読んだらいいのでしょうか?

 大坂住吉の貧しい漁村で、自己流の兵法を磨いていた浦安仙八は、これから漁師となるか、将来のない浪人となるか決断を迫られる中、大盗禅師という謎の僧に出会います。急に現れ何やら摩訶不思議な術を使う禅師に導かれ、仙八は徳川幕府を転覆させるための結社に身を置くことになります。
 
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4040

Author:4040
4040です*
最近のお気に入りは、梨木香歩さん、森博嗣さん、伊坂幸太朗さんです。
私も読んだぞという方は、これもいいぞという方は是非教えてください♪

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