☆4040の本棚☆ 文庫とミステリに偏っている私的な読んだ本のおぼえ書きです。
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2006.12
17
(Sun)

「雪屋のロッスさん」 


いしい しんじ / メディアファクトリー
Amazonランキング:87701位
Amazonおすすめ度:



 「ダ・ヴィンチ」の広告で見てすごく気になっていた本です。
素朴でかわいらしい表紙が気に入って購入しました。
30のさまざまな職や役割を持った人やものたちの、短いお話がつまった暖かい本です。

 切り取られた人たちのチョイスがなんとも面白いんです。
「大泥棒の前田さん」「象使いのアミタラさん」「ポリバケツの青木青兵」・・・。
 図書館司書や風呂屋のように日本人で、一般的な職業の人もいれば、雪屋やパズル製作者のように外国人もいるし、ポリバケツや豚なんかもいます。結構現実的な設定もあれば、すこしありえない、不思議な世界を持った設定のときもあります。
 ひとつひとつの話は、短い中にもドラマがつまっています。
その人の持つ悲しみや寂しさ、苦労が垣間見えていたり、
強い信念があったりします。
それがやんわりとした調子で表現されています。
 自分のいる国や時代であっても、遠い国や時間のように感じて、ゆったりしている、いしいさんのお話はとても落ち着きますね。
大人向けの童話といったかんじで、せかせか忙しい毎日にちょっとずつ読んでみるのにちょうどいいと思います。
自分はここにならべられるようなストーリーを持った人間になれるでしょうか?
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2006.12
09
(Sat)

「年を歴た鰐の話」 


レオポール・ショヴォ, 山本 夏彦 / 文藝春秋
Amazonランキング:24731位
Amazonおすすめ度:



レオポルド ショヴォー(L´eopold Chauveau)氏の童話を紹介したいと思います。
『ショヴォー氏とルノー君のお話集』として、福音館書店から5巻のシリーズで発刊されています。ショヴォー氏が、息子のルノー君にせがまれて、思いついたストーリーを話してあげるという話です。
 動物や魚や植物が主人公になる話が多いです。不思議な雰囲気を持った作品ばかりで、時には残酷だなぁと思うような話もあります。
 最初に読んだのは中学生の時。横長のハードカバーの本で、誰も読んでいなかったのに、やけに気に入って読んでいました。
 「挿絵」も話しにいい味を出しています。黒のペンだけで描かれた素朴な挿絵が気に入っています。
 
 もう読めないかなと思いながら、忘れかけていたのですが、
京都のガケ書房や恵文社で再会することができました。
子どもの頃に読んだ本にまた出会えるのは素敵なことです。

 この「年を歴た鰐の話」は、私が確認できただけで3種類の本があり、映画にまでなっています。
 今回読んだ作品は、名コラムニスト山本夏彦の若き日の翻訳を一周忌を前に再刊された本。桜井書店から刊行された昭和22年版が底本だそうです。それも、なんと昭和17年初版の作品!言葉遣いが、旧仮名遣いで趣深いです。 表題作のほか、「のこぎり鮫とトンカチざめ」「なめくぢ犬と天文学者」の全3作品が収められています。

 現代版の本は、福音館書店から刊行されている『年をとったワニの話―ショヴォー氏とルノー君のお話集〈1〉』と、
プチグラパブリッシング 刊行の、『THE OLD CROCODILE―年をとった鰐 』の2種類を発見しました。
 後者は、デザイン的にクールな感じなのでお部屋に飾ってもよいかもしれません。


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2006.12
05
(Tue)

「麦ふみクーツェ」 


いしい しんじ / 新潮社
Amazonランキング:57376位
Amazonおすすめ度:



 はじめて,いしいしんじさんの作品を読みました。
外国の童話みたいな不思議な世界の話でした。こども向けかと思いましたが、むしろ大人が読んだほうがこの世界観を面白いと感じられるかもしれません。 

 主人公の「ねこ」と呼ばれる男の子は、小学生なのに大人よりもはるかに大きい身体を持ち、学校では友達もおらず、自分に非常におおきな劣等感を抱いた男の子です。彼の父親は数学の先生ですが、能力以上の問題をずっと取り組み続け、数字に幻想を抱く変わった人。おじいちゃんは、町の吹奏楽団を率いる打楽器奏者で、音楽にとことん厳しい人物です。ねこはおじいちゃんにみっちり音楽を教えられて生きています。
彼には母親がいません。ねこは自分が母親のおなかを破って生まれたせいで、母親が死んでしまったのだと罪の意識にさいなまれています。

 そんな彼の、心の支えのような存在が「クーツェ」です。
ある晩現れた謎の小人「クーツェ」はいつも「とん、たたん」と一定のリズムを刻みながら黄色い大地を踏みしめています。ねこにはふと瞬間にクーツェが現れたり、頭の中で足ふみの音だけが聞こえたりするのです。 
 話は、ねこが、吹奏楽の指揮者を目指しながら、自分の劣等感を乗り越えていく流れになっています。
 
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2006.12
01
(Fri)

「ドナウよ、静かに流れよ」 


大崎 善生 / 文藝春秋
Amazonランキング:116,645位
Amazonおすすめ度:



 ドナウ川の美しい写真に惹かれて借りました。
(大崎さんの作品の表紙はどれも綺麗ですね)
 ここ最近読んだ中で心にずっしり残った作品です。

 これはノンフィクション作品です。大崎さんがどうしても気になって、なにか力にひきつけられたひとつの新聞記事。―日本人の18歳の少女と33歳の男性がドナウ川で投身自殺をした―。日常の中では、たったそれだけの記事。それを調べ始めて、彼女がなぜその齢で死を自ら選び取ったのかを探っていく。そういう作品です。
 読んでいて「小説みたいだ」と感じました。ノンフィクションであるのに、自殺した少女日実が辿った境遇と恋愛は小説のようなストーリーだったからです。これが普通のフィクションならば、悲劇の恋愛小説の定番系で終わっていたと思います。ノンフィクションであるがゆえに、最悪の結末へと誰も止められないまま進んでいくという過程が、「おもしろい展開だ」と素直に受け止めてはいけない気がしてしまいました。生きていたら自分の一年年上の女性の人生だったのですから。
 生き方については、正直に言えば共感できるところ、感動するところはないでしょう。周りの静止も聞かず、海外の地で好きな男と生活することを選び、生活すること、誰かを頼ることもできなくなって自殺した。これが現実の話であるがゆえに、死を持って愛をつらぬいたという美談にはできません。
 では、なにがこの話ですごいと思ったのかといえば、この事実を丁寧に調べて、できるだけ第三者の目で、しかも小説のようなストーリーをつけ、人々の心の攻防を描き出したところだと思います。
 日実さんが寂しさのあまり千葉とつきあいだし、周りをシャットダウンし不信感でいっぱいになったあと。両親と友人達、そして渦中の二人の複雑な精神状態の書きかたがとても丁寧でした。なにをやっても、何を言ってもうまくいかず、すれ違い、日実さんが逃げ道を失い、破滅に向かっていく話のテンポも圧巻でした。
 
 主人公が自殺ということ、ノンフィクションということで、この作品は一体何のために書かれたのかということも重要になってくると思います。日実さんが入れ込んだ男性・千葉は経歴もあやしい、精神病の疑いのつよい人でした。一時日実さんは彼に洗脳されていたように見えますし、実際にそうだったのかもしれません。
 日実さんの両親は、千葉のせいで日実は自殺した、パラノイアの千葉に殺されたということをしきりに訴え、作品にもそれを求めました。しかし大崎さんはそれをしませんでした。
 丁寧に調べる中で、消息をたった後の日実さんの生活を知ることで、必至に生きようと働いていたという姿から、決して洗脳されたり、殺されたりして死んだのではないのではないかという結論を出しました。
 一方的に千葉を攻めるのではなく、両親の途中の対応から、生まれたときからの生活環境まで洗いざらい明らかにしました。たくさんのああすればよかった、これがいけなかったという状況が複雑に絡み合って怒った悲劇だった。日実さんの本当の心のうちはわからないけれど、たくさんの事実から導き出される死の真相、日実さんがなにを思って生き、死んだのかが描かれました。
 犯罪にあった遺族が本を出すことはしばしばありますが、あれは事件と犯人への怒りと、大切な人を失った悲しみ、2度と怒らないことへの祈りをつづったものだと思われます。それは書くことでひとつの気持ちの整理のようなものになるのでしょう。
 しかし、この作品の場合、書いたのは第3者で、遺族である両親にとっても、かなり厳しい事実が書かれたものとなります。
結局、誰に向けて、何のために書かれた作品なのでしょう?
日実さんの「生きた証」なのか、
大崎さんの知りたいと思ったことへの満足なのか、
判断がかなり難しい作品だと思いました。
 
 どんな意義があるかわからないし、
話も寂しく、重々しいし、
涙も感動も、得られたものなんてないのだけれど、
とても印象的な作品でした。

(どうでもいいことですが、日実さんは太田莉菜さんに雰囲気が似ているなぁと思いました。)

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4040です*
最近のお気に入りは、梨木香歩さん、森博嗣さん、伊坂幸太朗さんです。
私も読んだぞという方は、これもいいぞという方は是非教えてください♪

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