「オーデュボンの祈り」
閉ざされた島で生きていた未来を予見するカカシは何を祈っていたのか・・・。
本作は伊坂幸太郎氏のデビュー作品。デビュー作とは思えないほどのオーラを放っている。
話は、仙台沖合の誰にも知られていない島に、コンビニ強盗に失敗し、極悪な警察から逃げだした伊藤が助けられて連れてこられたところから始まる。島は江戸時代の終焉時に鎖国をすることになり、轟という男の連絡船が外界とをつなぐだけで、誰も外に出たことはない。伊藤は100年ぶり・2人目の記念すべき訪問者である。
驚くべきことに、島には「優午」と呼ばれるカカシがおり、100年前から島にいて、しゃべること、未来を見通すことができるという。しかし、後に真実を伝えることはあっても、めったに未来を人々に教えることはない。この知恵者であるカカシを島民は慕っている反面、悲劇を教えてくれないことで複雑な感情も持っている。
伊藤が、カカシに謎のアドバイスを受けた翌日、カカシは何者かによりバラバラにされ「殺されて」しまう。誰がなぜ案山子を殺したのか。カカシはなぜ自分の死を予知しなかったのか、もしくは誰にも伝えなかったのか。島内には衝撃が走る。
島には独特のルールや変わった人物がたくさんいる。たとえば「桜」という男は、詩を読み、花を愛でるが出会った悪しき人物は容赦なく射殺する。「桜」の射殺は殺人にはならず、天災などと同じくしかたのないことであり、島のルール・法律のようなものだという。
田舎の長閑な時間の中、変わった人物や、その謎の行動、「桜」による殺人などに出会いながら、伊藤はカカシによってまかれた種から、人々と島に隠された多くの謎、そしてカカシの死の真相と彼の祈りをを見つけ出していく。
誰かが殺されて、「探偵役」もしくは刑事が誰が犯人か、どうやって事件が行われたかを探っていくのが普通のミステリだとすると、伊坂さんの作品は色々な意味でそれを超えている。
カカシの殺人事件という突飛な事件が根幹ではあるけれど、それぞれのキャラクターが持つ行動や言動すべてが、ばらまかれた絶妙な「伏線」であり、カカシの謎だけではなく、人々の隠された真実まですべて解き明かされていく構造になっている。これがほんとうにうまいのだ。伊藤はその間を歩いていて、だんだんとその真実に近づいていくだけなのだ。
島の事件と並行して、仙台では伊藤を追っている警官・城山がいる。城山は警官という肩書きをかぶった一番あってはならない凶悪な人物である。人を精神から崩壊させ嬲り殺す殺人犯であり、レイプ犯である。読んでいるだけで怒りがこみ上げる人物だ。彼が伊藤の元恋人に目をつけ、だんだん近づいていく。非常にスリルのある場面である。もちろんここにもカカシのまいた伏線が絡んでくる。
この城山や島内で「桜」に殺されるレイプ犯など、犯罪を犯す若者たちに対する憤りが溢れているもの特徴。それは、犯罪はいけない、悲しむ人がいる・・・という風に道徳を訴えているのではない。ただ、作者はそういうものが許せないんだろうなという感覚が伝わってくる。この作品で言えば、動物の生態をぶち壊す人間への警鐘まで感じられる。普通のミステリでは人が死ぬことがファクターであるため、そういうメッセージ性は薄いけれど、伊坂氏の作品にはなんとなく作者の感情が見えてくる。
そして、もうひとつ好きなのは登場人物のさっぱりしたキャラクターや、洒落た会話だ。短い断定で続く会話は小気味よくて、詩的でクールなのだ。特にたまに出てくる、伊藤の祖母なんかはめちゃくちゃサバサバしていて格好良い。
伊藤のような島外の人間がもたらしてくれる「島にかけている何か」が何かという謎も、気になる点で、それが分かった場面は爽快である。
この作品も、ミステリーとしての設定が絶妙な上に、おもしろさ以上の感情を残してくれる素晴らしい作品だった。
本作は伊坂幸太郎氏のデビュー作品。デビュー作とは思えないほどのオーラを放っている。
話は、仙台沖合の誰にも知られていない島に、コンビニ強盗に失敗し、極悪な警察から逃げだした伊藤が助けられて連れてこられたところから始まる。島は江戸時代の終焉時に鎖国をすることになり、轟という男の連絡船が外界とをつなぐだけで、誰も外に出たことはない。伊藤は100年ぶり・2人目の記念すべき訪問者である。
驚くべきことに、島には「優午」と呼ばれるカカシがおり、100年前から島にいて、しゃべること、未来を見通すことができるという。しかし、後に真実を伝えることはあっても、めったに未来を人々に教えることはない。この知恵者であるカカシを島民は慕っている反面、悲劇を教えてくれないことで複雑な感情も持っている。
伊藤が、カカシに謎のアドバイスを受けた翌日、カカシは何者かによりバラバラにされ「殺されて」しまう。誰がなぜ案山子を殺したのか。カカシはなぜ自分の死を予知しなかったのか、もしくは誰にも伝えなかったのか。島内には衝撃が走る。
島には独特のルールや変わった人物がたくさんいる。たとえば「桜」という男は、詩を読み、花を愛でるが出会った悪しき人物は容赦なく射殺する。「桜」の射殺は殺人にはならず、天災などと同じくしかたのないことであり、島のルール・法律のようなものだという。
田舎の長閑な時間の中、変わった人物や、その謎の行動、「桜」による殺人などに出会いながら、伊藤はカカシによってまかれた種から、人々と島に隠された多くの謎、そしてカカシの死の真相と彼の祈りをを見つけ出していく。
誰かが殺されて、「探偵役」もしくは刑事が誰が犯人か、どうやって事件が行われたかを探っていくのが普通のミステリだとすると、伊坂さんの作品は色々な意味でそれを超えている。
カカシの殺人事件という突飛な事件が根幹ではあるけれど、それぞれのキャラクターが持つ行動や言動すべてが、ばらまかれた絶妙な「伏線」であり、カカシの謎だけではなく、人々の隠された真実まですべて解き明かされていく構造になっている。これがほんとうにうまいのだ。伊藤はその間を歩いていて、だんだんとその真実に近づいていくだけなのだ。
島の事件と並行して、仙台では伊藤を追っている警官・城山がいる。城山は警官という肩書きをかぶった一番あってはならない凶悪な人物である。人を精神から崩壊させ嬲り殺す殺人犯であり、レイプ犯である。読んでいるだけで怒りがこみ上げる人物だ。彼が伊藤の元恋人に目をつけ、だんだん近づいていく。非常にスリルのある場面である。もちろんここにもカカシのまいた伏線が絡んでくる。
この城山や島内で「桜」に殺されるレイプ犯など、犯罪を犯す若者たちに対する憤りが溢れているもの特徴。それは、犯罪はいけない、悲しむ人がいる・・・という風に道徳を訴えているのではない。ただ、作者はそういうものが許せないんだろうなという感覚が伝わってくる。この作品で言えば、動物の生態をぶち壊す人間への警鐘まで感じられる。普通のミステリでは人が死ぬことがファクターであるため、そういうメッセージ性は薄いけれど、伊坂氏の作品にはなんとなく作者の感情が見えてくる。
そして、もうひとつ好きなのは登場人物のさっぱりしたキャラクターや、洒落た会話だ。短い断定で続く会話は小気味よくて、詩的でクールなのだ。特にたまに出てくる、伊藤の祖母なんかはめちゃくちゃサバサバしていて格好良い。
伊藤のような島外の人間がもたらしてくれる「島にかけている何か」が何かという謎も、気になる点で、それが分かった場面は爽快である。
この作品も、ミステリーとしての設定が絶妙な上に、おもしろさ以上の感情を残してくれる素晴らしい作品だった。



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