「もえない―Incombustibles」
森博嗣さんのミステリ小説。
ちなみに表紙は鈴木成一デザイン室のもの。
高校生の淵田は、亡くなった同級生の杉山の父から、彼が持っていたという金属プレートを渡される。プレートには、なぜか淵田の名前が刻まれていた。さほど仲がよかったわけでもない杉山からの謎の遺品に戸惑う淵田は、以前、杉山から手紙を渡されたことを思い出す。
手紙には「友人の姫野に、山岸小夜子という女に関わらないように伝えて欲しい」と書かれている。姫野は山岸とつきあっていたがすぐに別れており、二人は首をかしげる。そして、調べると山岸も亡くなってしまっているらしい。
そんな中、姫野のガールフレンドの飛山と会うが、彼女は淵田と小学校で同じクラスだったという。しかし淵田はそれを覚えていなかった。なにか自分には欠落している記憶があるのではないかと彼は疑い始める。
何故か気になって手繰り始めた杉山の交友関係と、淵田の過去の記憶とがクロスしたときに分かった真相は・・・という話だ。
1行1行を改行して描かれる、記憶を極限まで辿ったり、犯人と攻防するシーンがこの作品にも登場する。登場するのが普通の高校生なので若々しいけれど(大金持ちや天才などは出てこない)、「カクレカラクリ」よりはかなり静かで落ち着いている作品だったと思う。
森博嗣さんの小説では、記号論のようなテーマが語られることがある。
名前は人間が認識するためにつけるものだ。認識だけではなくて、時にその名前のために働いたり、人を傷つけたりもする、結構重い存在。人が死んでしまった場合、肉体は消えてしまうけれど、残るのは名前である。もちろん名前すら消えてしまうこともあるけれど。
「もえない」は、間違っても「萌えない」ではないことがわかってほっとしている。



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