「李欧 」
22歳で出会った、大学生と殺し屋の15年越しの危険を孕んだ絆を描いたサスペンス
李歐という男がいる。彼は「アジア一の投資家で、億万長者で、スパイで、ギャングで、殺し屋」である。容姿端麗で、美しい声で謡い・舞うこともできる。非常に危険で、不思議で、小説においては非常に魅惑的な男である。
主人公の吉田一彰は、この李歐に「惚れた」。
彼は大阪大学に通う大学生で、ナイトクラブなどでアルバイトをしている。普通の大学生のようだが、友人はおらず、女を渡り歩き、危険にも手を染めたりする陰のある青年だ。彼は6歳の頃、母親と大阪の工場がひしめく街に住んでいた。遊びに行っていた工場で働く韓国人が殺され、その直後に、母親は忽然と姿を消してしまったという過去を持つ。
彼は、大学生になり、母の奇跡を辿って再び大阪に。母親が最後に一緒になったとされる趙文礼を発見するも、その趙を殺害する計画に巻き込まれ、趙ら5人が一彰の目の前で射殺される。
その後、幼い頃に世話になった工場主の守山の元を訪れると、そこには5人を射殺した男が匿われていた。その男が李歐である。一彰とおなじ22歳の男は、いくつもの偽名を持ち、各方面から狙われる危険な男で、どの顔が本物か分からない。一彰が出会うはずのなかったような男である。一彰は李歐という存在に一気に惹き付けられてしまう。
二人は「友人」になり、拳銃を貿易商の笹倉から大量に盗むことに成功。一緒にいこうと誘われた一彰であるが、李歐だけがシンガポールへ逃げることになる。いつか大陸に一彰を連れて行くという約束を残して。
殺人教唆で服役したあと、一彰は守山工場で働くようになる。幼い頃にひきつけられた鉄を削って部品を作り上げる作業を毎日続けて堅実に働く。しかし、堅実に生きる一方で、危険な世界にも半分身をおいたままである。刑務所で知り合った組長の原口と男の関係と拳銃というつながりで逢瀬を重ねる。拳銃を解体し、部品を削り、修理する。鉄を削る作業―それが部品でも、拳銃でも―にのめりこんでいく。
そして、もう二度と会うことでないであろう、李歐のことを幾度も考える。時折耳に挟む、投資家として活躍しつつ、様々な組織から狙われ、いくつも名前を変え代役を立て、死んでは新たな名前で生き返り、本当の姿は見せないという李歐。本当に李歐という、あの清清しく妖艶な男は存在していたのだろうか。李歐と大陸に行くという、叶わない夢を抱きつつ、一彰はどこか空虚な人生を歩んでいる。
李歐については、冒頭で登場する以外は、一彰が思いを馳せ、警察や側近、テレビの噂でしか一彰や読者の前には現れない。詳しくかかれないからこそなのか、非常に魅力的に見えてしまう。(実際にいたら危険すぎて関わりたくはないけれど。)
一彰は、手に入れたささやかな幸せや、関係してきた人間を、李歐という男に関わったことから失うことになる。その上で、この2人は再会するのであるが、危険な世界と断絶することなく、巻き込んでしまった果ての再会は、非常に身勝手な感じもするのだけど、なぜかラストは清清しいから不思議。
鉄工所の情景や拳銃、暴力団、マフィアなど、非常に硬質で男臭い題材であるにも関わらず、二人をつなぐ桜の情景が美しい。女性が書いたものだからなのだろうか?
描写が細かく、登場人物にどんどん味が出てくる、面白い本だった。
李歐という男がいる。彼は「アジア一の投資家で、億万長者で、スパイで、ギャングで、殺し屋」である。容姿端麗で、美しい声で謡い・舞うこともできる。非常に危険で、不思議で、小説においては非常に魅惑的な男である。
主人公の吉田一彰は、この李歐に「惚れた」。
彼は大阪大学に通う大学生で、ナイトクラブなどでアルバイトをしている。普通の大学生のようだが、友人はおらず、女を渡り歩き、危険にも手を染めたりする陰のある青年だ。彼は6歳の頃、母親と大阪の工場がひしめく街に住んでいた。遊びに行っていた工場で働く韓国人が殺され、その直後に、母親は忽然と姿を消してしまったという過去を持つ。
彼は、大学生になり、母の奇跡を辿って再び大阪に。母親が最後に一緒になったとされる趙文礼を発見するも、その趙を殺害する計画に巻き込まれ、趙ら5人が一彰の目の前で射殺される。
その後、幼い頃に世話になった工場主の守山の元を訪れると、そこには5人を射殺した男が匿われていた。その男が李歐である。一彰とおなじ22歳の男は、いくつもの偽名を持ち、各方面から狙われる危険な男で、どの顔が本物か分からない。一彰が出会うはずのなかったような男である。一彰は李歐という存在に一気に惹き付けられてしまう。
二人は「友人」になり、拳銃を貿易商の笹倉から大量に盗むことに成功。一緒にいこうと誘われた一彰であるが、李歐だけがシンガポールへ逃げることになる。いつか大陸に一彰を連れて行くという約束を残して。
殺人教唆で服役したあと、一彰は守山工場で働くようになる。幼い頃にひきつけられた鉄を削って部品を作り上げる作業を毎日続けて堅実に働く。しかし、堅実に生きる一方で、危険な世界にも半分身をおいたままである。刑務所で知り合った組長の原口と男の関係と拳銃というつながりで逢瀬を重ねる。拳銃を解体し、部品を削り、修理する。鉄を削る作業―それが部品でも、拳銃でも―にのめりこんでいく。
そして、もう二度と会うことでないであろう、李歐のことを幾度も考える。時折耳に挟む、投資家として活躍しつつ、様々な組織から狙われ、いくつも名前を変え代役を立て、死んでは新たな名前で生き返り、本当の姿は見せないという李歐。本当に李歐という、あの清清しく妖艶な男は存在していたのだろうか。李歐と大陸に行くという、叶わない夢を抱きつつ、一彰はどこか空虚な人生を歩んでいる。
李歐については、冒頭で登場する以外は、一彰が思いを馳せ、警察や側近、テレビの噂でしか一彰や読者の前には現れない。詳しくかかれないからこそなのか、非常に魅力的に見えてしまう。(実際にいたら危険すぎて関わりたくはないけれど。)
一彰は、手に入れたささやかな幸せや、関係してきた人間を、李歐という男に関わったことから失うことになる。その上で、この2人は再会するのであるが、危険な世界と断絶することなく、巻き込んでしまった果ての再会は、非常に身勝手な感じもするのだけど、なぜかラストは清清しいから不思議。
鉄工所の情景や拳銃、暴力団、マフィアなど、非常に硬質で男臭い題材であるにも関わらず、二人をつなぐ桜の情景が美しい。女性が書いたものだからなのだろうか?
描写が細かく、登場人物にどんどん味が出てくる、面白い本だった。



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