☆4040の本棚☆ 文庫とミステリに偏っている私的な読んだ本のおぼえ書きです。
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2008.11
29
(Sat)

「探偵伯爵と僕」 

 「子供たちに、大人は偉いと見せかけている。これはなかなか大掛かりなトリックだ」



 久しぶりの更新です。年末は忙しく、本を買えず・読めず・更新できず。そんな中、しばらくカバンに入れていたのがこの本。

 近頃、「理不尽な理由」で人を殺す人がいる。「社会に恨みが」「自暴自棄になって」「誰でもいいから殺したかったから」。誰もがなぜ彼らが殺人に走ったのか理由を知ろうとする。彼らは異常な精神の持ち主で、悲惨な過去や挫折の昔があり、あぁそんな人間ばかりが生まれてくるのか、怖い怖いおぞましい。
 「理不尽な理由」とは言うけれど、人を殺していい正当な理由は何処にもない、と私は思う。「理不尽な理由」でなくとも、奪う、排除する、守るなど、誰もが理解できる理由があれば、殺していいのかといえばそうでもない。殺していけないものは殺してはいけないものなのだ。事例を細かくしていけバイクほど、その信念は薄れてしまう。
  そもそも人を殺してはいけないというルールは、自分が殺されたくないという意識が一番の根底にあるだろう。自分が殺されないためには、相手を殺すか、殺されなくてもいい関係・状況になければならない。昔は前者が勝っていたのだろうが、学習したのか、ヒトは殺されなくていい関係を、法律やルール、宗教など「殺してはいけない」という考え方によって作ってきたんじゃないかと、荒削りだけど思う。
 逆に、私たちが何故人を殺さないのかを考えてみる。法律で決められているから、悪いことだから、必要がないから、怖いから、哀しいから、誰かが悲しむから。動物なら自分の命を守ったという事実しかないが、人間にはそこに各々あらゆる感情が起こるのだ。殺されたくないという気持ちに加えて、殺したくない理由が溢れているのである。
 感情、家族、社会的地位など抑止してくれるもの、ルール。なんでもいいから、人それぞれなにか思いとどまらせているものがあるはずである。「理不尽な」殺人犯たちにはその何でもいいから抑止するものがなかった。悪いことであるとは知っているのである。ただ、それは世の中から押し付けられたものでしかないのだ。色々な要因があるとは思うが、どんな人生の歩み方にしても、殺してはいけない、殺さない、自分なりの理由や抑止してくれるものが見つけられないとそうなってしまうのだろう。
 かといって、自分がヒトを殺してはいけませんっ!と啓蒙してまわる気はないし、そんな社会にならないように色々支援活動などもできないし、現実的ではない。できることといえば自分が殺さないことと、少なくとも怨恨などで殺されないような生き方をすることと、子どもができたとして、それを考えるきっかけを与えてあげることくらいだろう。

 殺の字が多くて物々しく、長くなってしまいましたが、この話は、一見夏休みの冒険譚と見えて、実に深いおもしろさを持った本です。
 小学生の新太は、自分をアール(伯爵)と呼ぶ男と出会い、「友達」になる。伯爵は探偵で、何かを調査しているが、ひげ面で真夏でも真っ黒なマントのようなスーツを着ており、神出鬼没で実に怪しい風体である。そんな中、新太の友人が失踪する事件が起こる。伯爵は、どうやら一連の子どもの誘拐殺人事件を独自に追っているようである。そして、新太自身も狙われ、ピンチに陥る。この一連の話が、夏休みに起こったハラハラする冒険の日記になっている。
 日記とはいえ、ラストにも関係するが、とても小学生の日記とは思えない出来である。小説家だから気づくのだろう、言葉やレトリックへのツッコミが面白い。伯爵のキャラクターがよい。最初「ZOKU」のような、架空の団体、社会制度の人間なのかと思ったが、ただの話が深くて行動が怪しい、魅力的なキャラクターだった。新太自身も、言葉多少知らなくても、思考が子どもと思えない(お話なので当たり前であるが)。ドライで頭がいい、どこかかわいくないけど、いい子どもである。
 ユニークなキャラクターに起こる事件。子どもに分かりやすい、小説家の言葉遊びが詰まった、面白いお話かと思えばそうでもない。恐ろしいのは起こっている事件が、現実に近いものである点である。小学校で何人もの児童を殺害する事件例や、「理由」なく子どもを殺す愉快犯が出てくる。多くの大人がなぜそんなことをするのか理解が出来ないと訴え、仇を討ちたいと必死になる大人たちを見た新太。彼は「嫌なことだからしたくない」から殺さない、殺してはいけないんだなと自分なりに冷静に考える。
 現実に起こりうる事件を用いて、社会派で重々しく感情や事件を絡ませた素晴らしい作品もあるが、この話は、子どもの視点を用いて、軽いタッチでこの問題を書いたところがすごい。 ミステリは往々にして、事件がやはり現実的ではない。面白いのは解決するところにあるからだ。森さんの今までの作品も解決が面白いものが多かった。メッセージはこめられているが、あまり表立っておらず、むしろ難解だった。この本は、なんか違う、分かりやすいなと感じていたけれど、『かつて子供だったあなたと少年少女のためのミステリーランド』という子どもも読めるシリーズが元だったということで分かりやすかったのだ。なるほどね。

 表紙は鈴木成一デザイン室のものでした。空のような地面のような、不思議な絵・・。
 
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2008.11
14
(Fri)

「もうひとつの季節」 

 

保坂 和志
Amazonランキング:81803位
Amazonおすすめ度:



 先日読んだ「季節の記憶」の続編です。これも購入。文春文庫率が上がってきた。

 マイペースの極みのような中野さん、松井さん、美沙ちゃん、そしてクイちゃんにまた会うことができる、おもいがけないプレゼントのような本である。しかもなぜか挿絵つき。
 
 この本も特別なドラマはない。前作からさほど時間がたっていない、冬の鎌倉。いつもと同じように中野・クイちゃん・美沙ちゃんは散歩に出かける。ただ変わったところは、迷い猫の茶々丸が仲間に加わったことだ。クイちゃんはこれでもかというほど茶々丸と遊ぶ。唯一のドラマといえば、茶々丸の本当の飼い主が見つかるという「危機」くらいである。
 
 そんなクイちゃんを見ながら繰り広げられる、哲学的な会話も健在である。
 クイが中野が赤ちゃんだったころ、猫と写っている写真を見て、「あの赤ちゃんは赤ちゃんだったパパなんだよね」「赤ちゃんだったパパは死んじゃわなくてパパになったのに猫は死ん、じゃったの」と問いかける。人間が成長することは知っていても、ぱっと写真を見せられると、地続きで人が成長していくということがまだ認識できていない。そんな細やかなことを描いているのだ。成長と、猫には訪れた「死」。大人でも出せない答えを中野がありきたりにならないように伝えようと苦心する。

 もうひとつは「世界」の感じ方についての議論。突然昔の旧友に出会ったときに感じる気持ちや、自然の一場面で感じた言葉で表せない気持ちがある。言葉という枠組みの中で感じているのか、言葉の外で感じているのか?それならば子供は大人と同じように考えられないのではないか、いや、感じられるはずだ。そんな答えの出ない議論が続いていく。

 どうでもいいところで、彼らの家の周りではヤマバトがないている。「クックックゥ、クゥウ、クゥウー」。
実家の周りでこの鳥の鳴き声がよく聞こえており(早朝によく聞こえていたような気がする)、ハトらしいというのは大きくなってなんとなくわかったのであるが、どの鳥なのか、ヤマバトという名前すら知らなかった。そもそも、あの独特な鳴き声を声や文字にしたことがなかったので、軽く感動を覚えてしまった。今住んでいる都会にもハトがいっぱいいるが、やつらは違うハトのようである。

 この作品の場合は、クイちゃんが非常に魅力的な存在である。子どもの思考、動き、ことばの描き方がとてもうまいし、大人を唸らせるような問いを投げかけてくるところがかわいいし賢い。
 続編が読みたくなる作品は、その作品でしか味わえないの空気がずっと続いていて欲しいと思わせるものがある。また、登場人物が非常に魅力的である。主人公だったり、仲間の雰囲気であったり色々であるが、もっと彼らの「未来」もしくは「過去」が知りたいと思う。
 ただ、あんまり続きすぎると、やはり、飽きるし、内容が乏しくなる感じも否めない。
 この作品は2冊目でも、1冊目と変わらぬ清清しさがあって、うれしい。
2008.11
08
(Sat)

「前巷説百物語」 

青臭い又市の、御行の又市誕生までの道筋

京極 夏彦
Amazonランキング:71456位
Amazonおすすめ度:



 御行の又市が活躍する「巷説百物語」の最終巻。
「巷説百物語」→「続巷説百物語」→「後巷説百物語」と続いていますが、これは時系列でいくと「巷説」の前。
 若い又市が御行姿で暗躍するまでの話が描かれている本編だけど番外編ともいえる、素敵な1冊。
 若い又市は、まだ「裏」ではなく堅気ではないにしろ「表」の世界にいる。上方を終われ江戸に来た股市は、その「青臭さ」(笑)が買われ、損料屋「ゑんま屋」の仕事を手伝うことになる。
損料屋とは、衣類や布団、食器などをレンタルする職業で、使われることで商品についた傷の「損」に対する料金をもらうという商売。「ゑんま屋」は幅広い商品を貸して損料を頂くだけではなく、「あらゆる損」を引き受ける稼業まで営んでいた。
 ゑんま屋の女主人お甲が持ち込む「損」。靄船の林蔵や、暗殺者の山崎寅之助、からくり道具制作を得意とする長耳の仲蔵らと協力して損を八方丸く収めて行く。その方法は、妖怪物の怪でカモフラージュしていくシリーズでおなじみの方法。本草学者の久瀬棠庵が怪異の裏づけをし、同心の志方がうまくだまされて公に解決とみなされるという流れである。
 又市は損とそれを埋める仕掛けは同じ重さでなければならず、また死人を出さないようにしたいという信念を強く抱いていた。 しかし、「稲荷坂の祗右衛門」にちょっかいを出してしまったばかりに、表だけで活動してきたゑんま屋に闇が襲い掛かる。そのことで仲間を多く失ってしまった又市は、「裏」の世界で生きることに決めるのである。
 口先で人を操り、仕掛けていく又市の駆け出し時代。既刊では完璧ともいえる仕事をしていたが、多くのものを失い、悲しみ、悔やんだ過去があったのである。切ない最後の章は、身分制度にかまけて人を見失った人々に怒り、感情をあらわにする又市が印象的だった。

 前の3巻の話にリンクした部分がたくさんあって、もう一度頭から読み直したくなる1冊。少女のおぎんや、名前は出ないが百介も登場。本当は文庫で買いたかったけれど、我慢できず図書館で借りてしまいました。

■寝肥(ねぶとり)
 女を何度も売りさばく極悪非道の色男。又市が入れ込んでいた女郎がその男の妻を殺害してしまったと自決しようとしていた。あまりにも不憫な女の人生に、又市は長耳や知り合った角助と事件を丸く隠蔽してしまうことに。「寝ぶとり」という東北に伝わるという病に似せて・・・。
 この1件で、又市は「ゑんま屋」の下で損料を補う仕事を手伝うことに。

■周防大蝦(すおうのおおがま)
 兄を殺した仇を敵討ちすることになったが、敵討ちをしたくないという侍。どうやら仇は濡れ衣を着せられているらしい。どちらに転んでも誰かが死ななければならないこの「損」を、大蝦の怪物で丸め込むことに!相手の武器で敵を倒す刺客・山崎寅之助登場。

■二口女
 前妻の子を虐待して死なせたという女。誰からも愛される働き者の女の依頼は、それを公にしてしまうと、家族が悲しみ、家はつぶされ、子供が不幸になるので公にできないが、心のうちにしまっておくことができない・・・。そんな分かりにくい「損」を埋める仕事が舞い込んだ。よくよく調べると女の罪ではないことがわかってきた。又市らは、頭にもうひとつの口ができるという怪異を仕立てて真相を暴く・・・。

■かみなり
 女をさらっては犯していた藩の留守居役をなんとかしてほしいという百姓の依頼で、その老侍を辱めた又市たち。その老人が自決したことで、又市は「やりすぎたのでは?」と感じていた。その不安は的中した。老人は百姓達のために、飢饉にそなえて米をプールしていたのである。老侍の恩恵を受けられず、これから予想される飢饉に絶望した百姓たちが、逆に又市たち一味を殺害する依頼を闇の者に依頼してしまった。仲間を助けるために3日の猶予を得た又市の前に救いの手を差し伸べたのは、江戸の悪党で有名な「御燈の小右衛門」だった。

■山地乳
絵馬に名前を書いてそれが黒く塗りつぶされると、その人物が死ぬ。そんな江戸版デスノート的な絵馬が世間を騒がせ、実際に何人もの人間が死んでいた。本当に神によるものか、誰かが操っているのか、奉行も手を出せない。
ゑんま屋・又市のもとに、上方での仲間文作と玉泉坊が現れ、絵馬の事件は「稲荷坂の祗右衛門」が絡んでおり、上方の一文字からの絵馬の事件だけでも止めてくれとの大きな依頼を持ってきた。山地乳という怪物を使い、表面的には上手く絵馬の噂を丸め込んだ又市たち。しかし・・・

■旧鼠
まかしょう―御行―が札を撒き散らす様を見ながら久世と将棋を指す又市。
表だけということで受けてきた損料の仕事がどこか大きすぎて狂ってきていると感じていた。小さな事件も「祗右衛門」に繋がるのではといぶかしむ。
その矢先、ゑんま屋に異変を感じとる。そして、ゑんま屋に関わる人々が次々に惨殺され、又市たちの身にも何度も危険が襲い掛かる。それは、祗右衛門に操られた無宿人や非人たちといった、階級の外に置かれた者達の犯行だった。あっという間にゑんま屋は廃業。仲間を失った又市は、御燈の小右衛門と組んで、祗右衛門の姿を必死で追い、非人たちの説得にでることに―。

祗右衛門の3回目・4回目の死の謎を描いた 「後巷説『狐異者』」の過去の話。2回目の死の真相と、又市が経験した苦々しい「失敗」を描いている。裏の世界だけで生きることを決意し、御行姿になったきっかけも祗右衛門にあったのだ。
2008.11
05
(Wed)

「ララピポ」 


奥田 英朗
Amazonランキング:2006位
Amazonおすすめ度:



 "a lot of people"=ララピポ

確かにうまい発音だとそう聞こえる。たくさんの人々がうごめく東京。なかなか社会になじめなかったり、一見堕落した稼業で生きている6人の登場人物が、滑稽に、残酷に絡み合う物凄くの濃い話。キャラクターは奇抜だし、やたらと下品なんですが、滑稽だし、小気味のよい読後感がある一作。虚しい日々を送り、幸せってなんなんだ…ともがいているところが書かれているから凄い。
 とりあえず、電車では読まないほうがいいでしょう。官能小説ではありませんが、まちがいなく出てくる言葉でひかれてしまいますので・・・。


第一話 WHAT A FOOL BELIEVES 
 対人恐怖症のフリーライター・杉山博(32)。
貯金を切り崩し、外に出なくていい最小限の仕事し貸していない、非常に自意識の強い男である。上の階の若い男(栗野)がとっかえひっかえ連れ込む女との情事を盗み聞きすることで性欲を満たしていた。ある日、図書館で自分に色目を使ってくるデブの女と出会い・・・。

第二話 GET UP,STAND UP
 AV・風俗専門のスカウトマン・栗野健治(23)。
 キャバクラに女をスカウトする仕事をしている。日ごとに我侭になっていくマネージメントしている女達に、奉仕する毎日。ある日、トモコという地味で冴えないが、ずるずる流されていく女のスカウトに成功して、キャバ嬢からAV女優へと持ち上げていくが・・。

第三話 LIGHT MY FIRE
 専業主婦にして一応AV女優・佐藤良枝(43)。
 スカウトをきっかけに性欲処理に役立つとAV女優になった。読み進めるうちに、彼女は非常に堕落しており、ゴミ屋敷と化した家の二階には、介護放棄された義母の死体があることが発覚。その上に、撮影の場で娘のトモコと遭遇し、「共演」してしまう!堕ちるところまで堕ちた彼女の行く末は・・・。

第四話 GIMMIE SHELTER
 NO!といえないカラオケBOX店員・青柳光一(26)。
 新聞、通販などなど頼まれたら断れず、恐ろしいほど損をしてきた男。近所の飼い犬の吠える声に苛立ち、脅迫文を送っている。カラオケBOXでは、女子高生の援交が横行していたが、仲介人に脅され、援交を見ぬふりにする代わりにその恩恵を受けていいという契約を交わしてしまう。どんどんエスカレートする女子高生達の行為に流されていく。

第五話 I SHALL BE RELEASED
 文芸コンプレックスの官能小説家・西郷寺敬次郎(52)。
 売れっ子官能小説家である彼は、話をテープに吹き込んで何冊もの文庫を発刊している。ところが、自身の性欲は満たされていないし、本当は書きたい「純文学」も実現は難しい。ある日、街で声をかけられ、女子高生との援助交際に手を出してしまう。そしてどんどんのめりこんでいく・・。

第六話 GOOD VIBRATIONS
 デブ専DVD女優のテープリライター・玉木小百合
 官能小説のテープリライトで生計を立てる彼女には更なる裏稼業があった。ひっかけた醜男との行為を隠し撮りし、裏DVDとして売っているのである。社会的には明らかに負け犬の醜男たちは、なぜか自分を支配したがる。太っているというコンプレックスが、マニアには受けているという、ほめられているのかけなされているのか非常に複雑な心境。それでも自分が必要とされているような気がして・・。
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