「はてしない物語」
ミヒャエル・エンデ, 上田 真而子, 佐藤 真理子, Michael Ende / 岩波書店(1982/06)
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ひさしぶりに児童文学的な作品を読みましたが、本当におもしろかったです。ファンタージエンと呼ばれる不思議な世界とそのおもしろい生き物達。アトレーユという勇敢で精悍な少年の姿。バスチアンの冒険。次から次につむぎだされる物語に引き込まれっぱなしでした。バスチアンが読む物語と、そのバスチアンがつむぎだす物語。二重、三重となったおもしろい構造。私達読者もその本の中に本当に入れたら!とおもわずにいられません。
変わっていくバスチアンの心、失われていくもの、そして、本当に必要だったものを探す旅。子どもが読むとすこし難しいようなところもあるように思いましたが、ただの冒険ファンタジーで終わらないところがすばらしい。
バスチアンの登場する「はてしない物語」は終わってしまったけれど、ファンタージエンでの物語りはつむぎだされ続ける。それを読みたいと思っても読むことはできない。「・・・・・別の物語の始まりになった。これはまた別の時にはなすことにしよう」という部分が出るたびに、その些細な出来事から始まる新たな物語を知りたいと思わずにはいられませんでした。先を考えるのは読者ということでしょうか?
ずっと読んでみたいと思っていた憧れの本でした。
分厚く、赤の布で巻かれた表紙。大好きな「モモ」を書いたエンデの作品。でも、子どもの私には高い本でなかなか手が出せませんでした。
先日、イタリアに行ったのですが、飛行機の中で読む本を考えました。飛行機が落ちたら・・・といらぬ心配をしたため、コレだけは読んでおかねばならない本を考えた末、この「はてしない物語」に行き着きました。買ったのは岩波の文庫版ですが、絶対に将来豪華装丁の本を買いたいと本当に思いました。
***あらすじ
主人公バスチアン・バルタザール・ブックスは、太っていてみんなにいつもいじめられている弱気な少年。ある雨の日、そんな学校に行くのが嫌になり、小さな本屋に立ち寄った。
そこで店主が読んでいる赤い装丁の本に惹かれ、その本を盗んでしまう。強い罪悪感から家にも学校にも行けないと考え、学校の秘密の部屋で本を読むことにした。どうせ誰も自分がいなくなっても心配していないのだ。妻をなくしたバスチアンの父親は心を閉ざしたまま。自分のことは必要としていないのだから・・・。
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「はてしない物語」は、はじめはこのバスチアンの読む『はてしない物語』と、それを読むバスチアンの姿を私達が読む形になっています。話はAtoZの扉絵で区切られています。
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〜『はてしない物語』(前半a〜l)
舞台は「ファンタージエン」と呼ばれる世界。人間ではなく、様々な妖精や魔人、小人、巨人などとても魅惑的ないきものが生息する世界である。そこは「幼なごころの君」とよばれる世界を支える女王がいるが、彼女は病んでおり、ファンタージエン中に異変が起こっていた。虚無が広がり、住人達が次々と姿を消していく。このままでは世界が滅んでしまう。
そこで、幼なごころの君を救う術を探す使者として、狩りの部族の少年・アトレーユが選ばれた。前半は、このアトレーユと、竜のフッフールの冒険が描かれている。
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アトレーユに憧れ、同じようにはらはらしながら話を読み進めていくうちに、話の中にバスチアン自身が現れていることに気がつく。なんと不思議な本なのだろうか。幼ごころの君を助けられるのはどうやらバスチアンだけのようだ。
迷った結果、バスチアンはファンタージエンの世界に足を踏み入れることになる。
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〜『はてしない物語』(後半m〜z)
幼ごころの君に名前「月の子(モンキデント)」と名づけ、ファンタージエンにやってきたバスチアン。そこでアトレーユがもっていた「アウリン」と呼ばれる権威をあらわすメダルを受け取る。彼の「望み」で世界は作られ、彼は自分の本当の望みを見つけなければならないという。
太っていていじめられっこで弱虫のバスチアンではなく、強く、勇敢で、精悍な顔立ちになったバスチアン。アトレーユらと出逢い、新たな世界を創造していく。
どんな望みも形になる。外見、強さ、名声、知性などあらゆるものを手に入れるバスチアン。しかしその心はだんだんすさんだものとなり・・・・。
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後半まで来ると、はてしない物語の意味、ファンタージエンがどういう世界なのか、そしてバスチアンの運命がようやくわかることとなります。人間が読み、中にはいり、新しい物語を創造することがファンタージエンの要。人々が物語を創造(想像)することをやめてしまうことは、ファンタージエンに虚無を生み出し、その虚無が人間の心を蝕んでいく・・・。
また、バスチアンのようにファンタージエンに来た人間は望みをかなえられるが、望みがかなうたびに現実世界の記憶をなくしていく、全ての望みをかなえたとき、つまりファンタージエンの帝王となったそのとき、全ての記憶が失われ、そのかわり現実の世界にも戻れず、廃人と化する。望みがなくなる、つまりは「変わる」ことができなくなるのだ。
バスチアンは、同じように名声をえて全ての望みをかなえて廃人になってしまう寸前だった。しかしアトレーユという親友のおかげで、父親の愛という本当に探し求めるべきだった望みを得て、また、勇敢な心をもつ少年へと生まれ変わってもとの世界に戻ることができたのです。
エンデは、物語を創造することの美しさを伝えたかったのでしょうか?空想するようなことをせず、ただただ現実という乏しい心を潤してくれるのがこういう本や物語。それらをわすれないでほしい。たくさんの伝えたいことのひとつじゃないかなと感じました。
この本を読んで、全てのものが物語りに通じているなぁと感じました。ささいな一瞬から転がり出るように物語は作られる。一人一人ちがった道筋があって、それら全てが物語。
わたしはどんな物語をあゆんでいくのでしょうか?
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