* bookmarker's bookshelf *

☆4040の本棚☆ 文庫とミステリに偏っている私的な読んだ本のおぼえ書きです。

「怪笑小説」


東野 圭吾 / 集英社(1998/08)
Amazonランキング:32,672位
Amazonおすすめ度:




鬱積電車
おっかけバアさん
一徹おやじ
逆転同窓会
超たぬき理論
無人島大相撲中継
しかばね台分譲住宅
あるジーサンに線香を
動物家族


 「毒笑小説」と同じようなミステリーではない東野圭吾さんの作品です。
こういう作品大好きですねー。おもしろくて毒がある。馬鹿みたいだけど、人の馬鹿な部分とか、かっこ悪いところが良く出ていておもしろいんです。

 たとえば「鬱積電車」。「あぁ隣のオッサンいやだなぁ」「あの女子高生声でかいー」などなど電車に乗るときイライラしてしまうもの。
それをわざわざ小説にしてしまった。隣の人から隣の人へ、次々にイライラしている頭の中を覗き込める作品です。
イライラしているのは自分だけじゃない。自分もイライラの対象になっているかもしれない・・・と電車の中で読むとちょっとゾクリといたします。

 笑えるのは、「おっかけバアさん」と「一徹おやじ」でしょうか。
「おっかけバアさん」は世の中に興味を持たずせこせこ生きていたばあさんが、演歌歌手「杉さま」にのめりこんでいく話。
ヨン様、松健様、キヨシ様・・・。世の中のめりこんでしまうおば様方が多々いらっしゃいます。
彼女達の「ファン」というコミュニティのなかでは、勘違いが上塗りされた見栄が起こっていて、このばあさんみたいに生活に破綻をもたらしてしまう人もいるんだろうなぁ。
みなさん寂しいのかなぁ。
 「一徹おやじ」の場合は、夫にはない若さと異性を求めるおばさんと違い、今度は自分の夢を子供に託す、これもありがち(かどうかは知らないが)な親父の話です。
プロ野球の夢を押し付けられた一人娘。弟が生まれた途端、野球地獄からは抜け出せたが、こんどは知らん振り。
馬鹿な親父は独自の(そして少し間違った)教育方針で息子に野球をしこむ。そして最期には、馬鹿馬鹿しい理由で裏切られちゃうのです。
 亀田、横峯、浜口・・・とスポーツ馬鹿親父はテレビでよく見ますが、見るたびに、こんな父親から生まれなくてよかった・・・と思ってしまいます。
自分が成長過程でスポーツ嫌いになっているせいもあるでしょうが、こんな小さな頃からスポーツしか道がないなんて悲惨だ!!!

 笑い話ですまないものも。「あるジーサンに線香を」は、言うまでもなく「アルジャーノンに花束を」をタイトルも作風もかぶらせた作品です。
線香ときたか。なんと失礼な。内容は、あるジーサンが実験で若返っていき、アルジャーノンが知性を持ち、そして失ったように、若さを再び失っていくというもの。
若さにすがりたい気持ちが痛々しいお話です。この人の場合、アルジャーノン的に愛すべき対象がいません。
束の間の恋愛を楽しみ、彼女達と別れ最期は寂しく死んでゆく・・・。
 「動物家族」は、「普通の子」がぶちぎれて犯罪を犯してしまう様子をユーモラス(?)に描いたもの。
親や兄弟から、差をつけられ、関心も期待もされず精神的に虐げられてきた少年。周りの人々が色々な動物に見える中、自分の姿だけなんなのか分からない。
大切なものを壊され、踏みにじられたそのとき、彼はぷつりと切れて今まで隠れていた姿を現すんですね。
この本の中で一番「怖い」作品ですね。

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