「薬指の標本」
「薬指の標本」には2作品が収められています。
「薬指の標本」
事故で薬指の先がなくなってしまった「わたし」が働いている「標本室」。そこには様々な人がひっそりと、自らの思い出を標本にしてほしいとやってくる。楽譜に書かれた音、愛鳥の骨、焼け跡に生えていたきのこ、火傷の傷跡…。人々の思い出が封じ込められていく。
そんな密やかな標本室で、わたしと標本技士は関係が深まっていく。しかしそれはどこか隠微である。技術士から贈られた革の靴。足にぴったりのその靴は、わたしから離れられないような魔力を持っていた。
もし、わたしが標本にしてもらうならば、それは何なのだろうか。
小川さんの作品は、こんなけっして大昔でも、外国でもないはずなのに、昔の、どこか遠い国の色あせた秋のような雰囲気を漂わせている。そして時間を切り抜いて、封じ込めるようなものが多いような気がします。
以前読んだ「沈黙博物館」もそんな雰囲気がありました。博物館と標本室という、生きているもの、もしくは死に行くものの時間をそこで止めて、しまっておくあたりが似ています。
そのへんがとても不思議な気持ちになります。
また、技術士との恋愛も狂気を感じさせていて、それも小川さんの作品で常々感じるものです。自分を彼のコレクションの一部にしてしまいたい・・・とは・・。そうやって彼のコレクションの一部になった女性がひっそりと何かの形で並んでいるのかしらと考えると、ちょっとしたサスペンス。
「六角形の小部屋」 こちらは失恋して、元の恋人との仲をグルグル考えている女性の話。
たまたまであったおばさん・みどりさんに、なぜか気を奪われ、着いていった先には、不思議な「小部屋」があった。
そこには、ひっそりと人々が訪れ、その六角形の小部屋に入り、なにかを「語って」帰るという。
ミドリさんとユズルさんはそこの番人である。
二人に頻繁に会いに行き、小部屋で、少しずつ自分の気持ちを解放していくわたし・・・・。
こちらは、2度と遭遇できない、不思議な人と場所が題材。
カタルシスを与える不思議な小部屋。
途中まではよかったが、だんだん依存し、中毒みたいになっていく。
最後、小部屋や二人を探し回り、どたばたするわたしが痛々しかったです。
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