☆4040の本棚☆ 文庫とミステリに偏っている私的な読んだ本のおぼえ書きです。
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2007.01
15
(Mon)

「グロテスク」 


桐野 夏生 / 文藝春秋
Amazonランキング:2799位
Amazonおすすめ度:


グロテスク〈下〉


 今年初めて読んだ本が「グロテスク」です。
実家で父が読んでいたものを発見しましたので、借りてみました。
下巻だけ持って帰りました。ごめんなさい。
新年早々エグイ本を選択してしまったものです。

 恐ろしいの美女であった娼婦のユリコ。
 大手企業の会社員の裏で娼婦をやっていた和恵。
 秀才で優等生だったミツル。
 そして、ユリコの影で目立たずに生きている「私」。

 この4人の女性の生き様を描いたこの作品。基本的に、名を明かさない「私」の独白で進められます。
 娼婦だったユリコが何者かによって殺害されます。1年後、ユリコの姉の知人だった和恵がアパートの一室で殺害されます。一流企業に勤めていたにもかかわらず和恵は娼婦をしていたことが明かされます。「私」は事件を静観しつつ、過去のことを振り返ります。
 この事件は「東電OL殺人事件」として、実際にOLと娼婦を両立させていた女性が殺害された事件をモチーフとしたものです。ずいぶん、OLの過去についてマスコミがセンセーショナルに報じたようです。
 この作品は、誰に、何故ユリコや和恵が殺されたのかではなく、社会的な役割を得ながらも、娼婦に身を落とした女性(=和恵)の心理を表した作品です。

 親子兄弟姉妹、学校、家庭、会社、社会の中、様々なところに現れる階級や差。残酷なまでの格差をこの小説は描いていて、空恐ろしかったです。
 一番痛々しかったのは、認められたいがために、ひたすらズレたまま突っ走った和恵。(それを、どこか小気味よく感じてしまうのも恐ろしい)。
 一番悲しいのは、和恵やユリコと距離をおいているようでいて、その自分との違いにずっと固執し続けていた「私」でしょう。
 グロテスクという言葉がぴったりの、女性の人生を描いた、読み応え十分の作品でした。
□■上巻

 「私」とユリコの幼いころから、高校生までを描きます。
 両親とも、姉とも全く似つかず、恐ろしいほどの美貌を持っていたユリコ。私はユリコと何かといって比較され、ユリコや両親を憎みながら生きていきます。
 勉強して、両親やユリコと別れ、自力で入ったQ学園。
そこでは、初等部、中等部、高等部…と入った時期や家柄によって熾烈な「階級」が存在しました。私は階級に無理に抗ったりついていこうとせず、心の中で周りを馬鹿にしながら、目立たないように暮らしていきます。
 そこで出会ったのが和恵とミツル。和恵は高等部からの入学で、成績がよいことで高いプライドを持っていました。平等でない学園生活に抗い、必死でついていこうとするあまり、周囲から阻害され、苛められます。一方、ミツルは聡明な少女で、中等部から入っており、TOPの成績を持って、周囲との関係を保たせていました。
 ユリコと一時的に離れた「私」ですが、ユリコはその美貌を持って、入れずはずもないQ学園中等部に入学してきます。私の比較される日々が再開します。
 ユリコはクラスメートの木島を介して売春を始めます。このころから男を追い求めていくユリコの人生が始まっています。
 「私」は、和恵の評判を貶めるよう仕向けたり、高3のユリコをリークして退学にさせるなどの画策を練ります。

 
■□下巻
 ユリコと和恵を殺害した張の裁判時の上申書、和恵の「売春日記」をはさんで、「私」が酷評を下しながら高校卒業後の彼女たちに起こったことと、殺人事件の一面が語られます。
 恐ろしく貧しい中国の地方から出稼ぎに出た張。妹を目の前で亡くし、日本へやってきました。巨大な中国の中の貧富の差、それにも増して裕福な暮らしを持つ日本での過酷な生活。その張の長々とした身の上話は、本の後半を読んでいると何処までが本当かはわかりません。
 「私」は祖父と公団で、公務員のパートに出ながらつつましく暮らしています。そのほかの3人のその後の人生は驚くべきものでした。
 ミツルは、東大で挫折を味わい、危険な宗教へ足を踏み入れ、殺人に加担してしまい、懲役を受ける身になっています。(ここにも熾烈な階級社会が見られます)。
 ユリコは、若いころは日に何百万も稼げる娼婦になりました。ただ、30代も中ごろ、太り、衰え、今や街娼に立つようになってしまいました。そして出会った張に殺されてしまいます。
 そして、和恵は一流企業に就職し、ほかの女性にない地位を獲得しますが、満たされません。会社では煙たがられ、家では母親など家族を養わねばいけません。そんなときに出会ったのが絶頂期のユリコ。自分が持たないものをユリコは持っていました。

 勝ちたい、勝ちたい、勝ちたい、一番になりたい。
 いい女だ、あの女と知り合ってよかった、といわれたい。

 こうして和恵は、恐ろしい化粧をして街娼に立つようになります。体を売るという落ちた行為にもかかわらず、それで誰かに認められている、ほかの女性に勝ったという実感を得るという、矛盾した感情を追い求める和恵。最後は、誇りにしていた仕事でさえおろそかになり、娼婦である自分のほうが自分だと、病的に感じるようになってしまいました。そして、ユリコを殺した張に優しさを求めてしまうのです。

 この話で一番重いのが、「私」の運命でしょう。
3人のように道を外さずに、勝ち逃げしたかのように見えた私。
 しかし、ユリコの息子で、類まれなる盲目の少年百合雄を手に入れてから、その生活は崩れ落ちます。殺されたけれど、何か持っていた百合子や和恵。そんな二人に羨望ばかりを抱いていた自分。それに気づいていない振りをしていた。
 自分の人生の空洞に気づかされ、手中に収めたと思った美しい甥も、やがて自分を見下し、手を離れていく。
そして「私」がとった手段が・・・。
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コメント

ありがとうございます 

>ちゃき様
はじめまして。
お越しいただき、ありがとうございますi-179
ひとつのテーマで色々な社会の一面を写していて、
それでいて、残酷だけれど読者を惹きつける
すごい本ですよね。
桐野夏生さんの作品をもっと読みたいと思いました。

>猫まんま様
お財布の天敵ときましたか(笑)
ありがとうございます。

作家という人たちは、自分の作ったストーリーで
世の中を映すんですよね。
いつも感嘆してしまいます・・・。

こんばんは 

こちらは財布の天敵ブログかもしれません(笑)。
はまりそうです。

この事件は私も記憶していますが、マスコミの取材のあり方に疑問を覚えた事件でもありました。
また購入一覧に追加ですね。

 

はじめまして。

私もつい最近この本を読みました。
子供時代からすでに出来上がっている
階級社会・・・
うなずき、共感できす場面が多くて
のめり込みました。
面白い本ですよね。

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