「哀愁的東京」
寂しいおじ様たちの心をぐっとつかむような作品を作っている…と勝手なイメージを抱いている重松さんの作品です。
東京を舞台に、様々な大人たちの寂しい心を描き出した大人の絵本のような本です。
主人公・進藤宏。40歳。絵本作家ですが、数年前に大ベストセラー「パパといっしょに」を出して以来、一度も作品をだしていません。スランプに陥ってしまったのです。副業のフリーライターの仕事がむしろ本業という状態。絵本とは正反対の、夢もない、雑多で読み捨てられるだけの文章を吐き出し続けています。妻と娘がいますが、アメリカで暮らしており、連絡も途絶えがちです。
この進藤に新しくついた編集担当者が、新米のシマちゃん。彼女は「パパといっしょに」の大ファンで、進藤にどうしても次回作を描いてほしいと食いつきます。渋々絵本の制作に取り掛かろうとしますが、うまくいきません。その理由は、「パパといっしょに」のモチーフになった人々との関係、そして彼自身の家族との関係にあるようでした。
東京を舞台に8人の様々な人々と進藤は出会います。どこか寂しい、その人々の姿から、進藤は何かを見出そうとします。
絵本というと、やわらかい、やさしい存在。そうでないものもたくさんありますが、子どもに希望や夢を伝えたり、時には道徳的なものを伝える役割持っています。進藤は、人々に感動と希望を与えるような作品を作り出しましたが、モチーフの当事者たちにとっては、その受け止め方がただただ悲しいものでしかなかったことになります。
その後スランプに陥る進藤が目にするものは悲しい、寂しい大人の姿ばかり。そこに何かを見出そうとして、紙に向かいますが、やはり、かけません。(絵本の題材としては、あまりにも寂しすぎますよね・・。)その代わり、進藤はずっと逃げてきた、自分の中の孤独や哀しみと向き合うことになったと思います。
なんだか嫌なこと、やるせないこと、悲しいことばかりだけど明日は来るし、そういう人がぐるぐる動き回って走っているのが東京か…。なんだか重いですが、不思議と暗い気分にはならないです。
おじ様方が読んだら、また違う感想をもたれるのでしょう。
第1章 マジックミラーの国のアリス
転落寸前IT社長。若いころの心の支えだった、覗き見部屋の女優・アリスにもう一度会いたいと進藤にもちかける。
第2章 遊園地円舞曲
老年のピエロ二人組。「パパといっしょに」のモチーフの由来の秘密と、本を楽しみにしていたピエロと進藤の間に入った亀裂。
そしてスランプの原点が明かされる。
第3章 鋼のように、ガラスの如く
子どもでも大人でもない、危うい美しさをもつ人気低落のアイドル。彼女が次に進む場所は?
第4章 メモリー・モーテル
敏腕編集者と、彼の元に送られてきた、とあるモーテルで撮られた裸の男女の写真。その女の手には「パパといっしょに」が・・。
第5章 虹の見つけ方
歌謡曲のヒットを飛ばしてきた名プロデューサー。時代にそぐわなくなった彼が最後の仕事に選んだのは、ずっとバックコーラスに使ってきた女性たちのための歌だった。
→これは人情!って感じでしたね。
第6章 魔法を信じるかい?
バーでさりげなくマジックを見せて、疲れた女性に驚きと不思議を与える女性。現実的なプロデューサーと彼女の間の若いころの記憶。
第7章 ボウ
生活感を失い、追い詰められたエリートサラリーマン。
「ボウ」で思い浮かべる漢字を3つ書いてみてください。
第8章 女王陛下の墓碑
進藤の友人のSMの女王様の話。老年にさしかかろうとした彼女の最期。
最終章 哀愁的東京
家もなければ籍も入れない、ホームレスの夫婦が誕生するという。幸せそうな二人に家族のあり方を考える進藤。
妻と娘が一時帰国。その目的はやはり。知らない間に大人になっていく娘に戸惑い、未来を思う。



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