「姑獲鳥の夏」
分冊文庫版 姑獲鳥の夏 下
とうとう足を踏み入れてしまいました。京極夏彦さんの「京極堂シリーズ」。
去年の夏あたりに、「巷説百物語」に嵌っていたのですが、他作品紹介で、多分こちらのシリーズも嵌るだろうなぁと薄々感じていました。作品数もそこそこあって、レンガのように分厚いこのシリーズ。森博嗣さんのシリーズも嵌りこんで読み進めていることを考えると、こんなにダークなものばかり読んでいていいのか自分…という問いかけがあったので、とりあえず読まないでおいたのですが…。
終戦直後の昭和の東京。
物書きをしている関口は、とある病院でたっている噂について耳にし、友人で古本屋を営む京極堂(中尊寺)に話をします。その久遠寺という病院では、赤ちゃんが消える、主人である医者が失踪しているらしい。そして、最も奇怪な噂が、その妻が20ヶ月ものあいだ子どもを孕んだままの状態でいるともののでした。
失踪している医師が二人の旧友であることがわかり、どうしても調べたいという関口に、京極堂は探偵の榎木津に相談するように言います。
奇遇なことに、榎木津の元に、久遠寺の娘・涼子が相談に訪れます。妹・梗子の失踪した夫がどうしているのか知りたいというもの。梗子はショックからか寝たきりになり、噂どおり、20ヶ月も孕んだままだといいます。関口、榎木津、京極堂の妹・敦子の3人は病院を訪れることになります。
関口の頭から消えた過去の記憶と、久遠寺姉妹との関係、失踪した藤牧の生殖に関する研究、久遠寺の忌まわしい家系、赤子失踪…となにやら色々なものが錯綜し、わけの分からなくなったところ、陰陽師である京極堂が「憑き物落とし」をするに至るというのが話の流れです。
「姑獲鳥」(ウブメ)とは、出産で命を落とした女性の無念を形骸化したものであると作中では説明されています。赤ちゃんを抱いて、恐ろしいことをする妖怪かと思っていましたが、厳密には違うようです。表紙にも、栞にもおどろおどろしいウブメが描かれ、文の冒頭のウブメの古典からの説明がされていますが、作中に妖怪が出てきて、妖怪が事件を起こすような話ではありません。
子どもを産むということ、産んだ子どもと引き裂かれた女の無念が恐ろしい事件になった…とすれば、ここで姑獲鳥が引き出されたことはおかしくないと思います。
探偵役の京極堂が陰陽師とはいえ、本当に呪術を使って事件を解決するのではなく、そういう知識をもって巧みに語ることで真相を皆に知らしめるという感じです。
なぜかほとんどお見通しなのには、突っ込まない、突っ込まない。下巻になるまで事件の現場に京極堂は現れないので、早く出てきて解決してくれという一心で読むので、その辺は気になりません。
冒頭、心理学や宗教・科学、民俗学的な問答が70ページ近く続いたりして、苦手な人は苦手だと思います。私は、妖怪という存在が人間の心の処理の結果のひとつの形だったというようなくだりなどに、なるほどーと唸ってしまったのですが。事件の真相も予想外の展開でとても面白かったのですが、この思想的なところも面白かったです。これで初作品というところが、また驚き…。
嵌ってしまう人には、心をつかんで話さないような作品だと思うので、ぜひ読んでみてください。
<余談>
森博嗣さんもしかり、京極さんの作品で惹かれてしまうのは、まずキャラクターと彼らの持つ関係とか世界観ではないでしょうか?
京極堂はこんな感じ。古本屋・神主でブラブラ暮らしていて、裏の家業は陰陽師。しかも、やたらめったら頭がよくて弁が立ち、達観している。ちゃっかり美人の妻もいたりする。
こういうキャラクターはツボに入ってしまいますねぇ(*_ _)
ありえないといえばありえないけれど、「いいなぁ、このキャラ」とすっきり思えるような文章で登場させてしまうからすごい。
かなりの鬱と葛藤を抱いている関口。他人には見えないモノが見える躁の榎木津。彼らと京極堂のやりとりもなんだかいい。
映画版のはまだ見ていないのですが、読んでいるときは京極堂=堤真一でした(笑)映画はどうだったんでしょう?実際エグイ映像とかないですよね。。堤さんも、永瀬正敏さん(関口)も、阿部寛さん(榎木津)も好きなおじさん(?)ランキング上位に入ってくる人たちなので、ぜひ見てみたいです・・・。
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