「対岸の彼女」
こんなに若いころから中年になるまでの、女性の置かれるコミュニティ・人における悩みや、微妙な心理を描いた作品はないんじゃぁないかと思いました。角田さんの作品の中でも分かりやすくて、面白かったです。
小夜子は、35歳の主婦。母親のコミュニティに入れず、同じように友達を作れない幼い娘に苛立ち、当たるような毎日から抜け、久しぶりに働くことに決めます。面接を受けた小さな会社の社長・葵は同じ年の女性で、社長という割には大雑把で明るく、自由な人物でした。昔から人付き合いが苦手で、人と距離をとってしまう小夜子は、葵に近づきたいと思います。
しかし、そんな葵は、実は小中学校でいじめられてきて友達の作り方を知らない、弱気な少女だった過去がありました。転校した高校で出会ったナナコ(魚子)は、女の子のグループに属せず、誰とでも仲良くできる葵とは間逆の少女。女の子同士のカーストも気にしない姿勢に葵は惹かれます。
小夜子と葵、葵とナナコ。二つの関係の話が交互に語られていきます。
最初は、小夜子は葵に、葵はナナコに憧れる図式なのかなと思っていました。実際は小夜子が葵に惹かれるように、葵も小夜子に惹かれていたんですね。(惹かれるといっても恋愛ではないですよ。)失ってしまったナナコという若いころの親友との関係を、自分がナナコの役割を演じながら小夜子とやっていけるような気持ちを持ったんですね。同性の誰かに憧れたり、嫉妬したりという気持ちがとてもよく分かります。
“友情”とか“親友”とか難しいですよね。相手はどう思っているか分からないということも理由のひとつですが、卒業や就職、結婚と、自分が属する場所や環境が変わっていくと、つきあいも減ったり変質してしまったりするので、ずっと維持していくのはすごく難しそうです。この本を読んでいて、女性ならではのつきあいのわずらわしさがあまりにもリアルで納得・共感しましたし、同時にあぁ嫌だなぁとぞっとしてしまいました。
こんな毎日でなんのために生きているんだろうというような内容が続きますが、ひたすら暗いわけではなく、爽快な読後感がありました。
実は人付き合いが苦手なのだという方には読んでいただきたく思います。
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