「東京奇譚集」
仕事で南港にあるデザイン会社を訪れました。そこは100年近くたった古い建築様式が自慢で、小さなギャラリーを併設しています。今回訪れたときには、「村上春樹」の本の装丁展が催されていました。タイポグラフィ教室の人々が、各々好きなように村上春樹の本の装丁をしたものが展示されていました。公式ではないものの、村上氏の「ご自由に」という許可だけはもらっていたよう。
どれも硬質で、シンプルで、静かで神秘的で素敵でした。モノトーンが多かったような気がします。一番覚えているのは、「海辺のカフカ」をすべてバラして、1,2,3…とキャプションごとに1冊の本にしてしまったものです。何十冊にもなっていてインパクトが大きかったです。村上氏の謎めいた作品の雰囲気がとてもでていておもしろかったです。
今回読んだのは、村上氏の短編集です。「奇譚」とつくと、読みたくなります。
この本もなかなかおもしろかったです。
「偶然の旅人」
こちらはエッセイ。村上氏の調律士でゲイである友人の体験した「偶然」を語る。
「ハナレイ・ベイ」
ハワイのハナレイ・ベイでサーフィン中に鮫に襲われて命を落とした青年。青年の母親は毎年その時期ハナレイ・ベイを訪れる。
「どこであれそれが見つかりそうな場所で」
突然神隠しのように消えてしまった夫を探す婦人の相談にのる男の話。なぜだか分からないが、男は消える際の「入口」を探している。
「日々移動する腎臓のかたちをした石」
「日々移動する腎臓のかたちをした石」の話を出会った女性と交際しながら書く小説家の話。
「品川猿」
突然自分の名前だけがどうしても思い出せなくなった女の話。彼女は品川区の心の相談室を訪れる。
一つ一つの話に何か深い意味があるのかどうか分からないけれど、結局どういうことか判明しないもののあるけれど、こういう作品はおもしろいと思います。 このなかで好きなのは「偶然の旅人」。ゲイの紳士がであった「偶然」同じ本を読んでいた女性。彼女は乳がんで、彼は彼女から仲違いした姉を思い出し、姉と十年ぶりに連絡を取る。すると「偶然」姉は乳がんになったことを弟に言うべきか否かで悩んでいたというもの。事実としては、ストーリーテラーの村上氏が書いただけあって、小説なのではないかと疑いたくなるいいお話だけれど、別に本当でもいいような気もする。
私が体験したことのある「偶然」は大阪から帰省する特急指定席で。空いていた隣の席に途中で乗車してきたのは、鹿児島から帰省してきた妹でした。チケットを取った日も違うし、互いの帰省日も知らなかったため、とても驚きました。
こういう偶然はどうでもいいけれど、目立つから記憶に残りやすいですね。偶然は奇跡的なことに思えるけれど、村上氏も言うように、実はいつでも起こっていて、普段は気づかないだけなのかもしれない。
今、私が佐賀ではなく大阪にいるのも、今の会社で働いていることも、今もっている友達とであったことも、すべて偶然の重なり合いの結果生まれた事象といってしまえば、そういえるような気がする。
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