* bookmarker's bookshelf *

☆4040の本棚☆ 文庫とミステリに偏っている私的な読んだ本のおぼえ書きです。

「ホテルカクタス」

ホテルカクタスという名前のふるいアパートに暮らす「きゅうり」と「帽子」と「数字の2」の友情のものがたり


江國 香織 / 集英社(2004/06/17)
Amazonランキング:69505位
Amazonおすすめ度:



 最近の4040にしては珍しい、秋の「和やかな」読書の時間にぴったりの本です。
この本の主人公は人間ではありません。きゅうりと帽子と数字の2という生物であり、モノであり、概念です。これらが同じアパートで暮らし、仕事をし、語らい、友情を育んでいるという変わった作品です。隣人のいさかいから出発した彼らの関係は、きゅうりの部屋にあつまり、お酒を飲みながら(2は下戸なのでグレープフルーツジュース)話をしあう仲になります。お互いのことを語り合ったり、故郷や家族の話や、眠れない夜、揃って旅に出たり、ちょっぴり苦い恋愛をしたりするというユニークな内容。

 きゅうりの中には食べられてしまうものはいないの?2の部屋にあるいすや毛布たちには人格はないの?などなど、設定の細かいところを疑問にもち、詰めていくとダメですよ。

 おもしろいのは、きゅうりや帽子や数字の2に与えられたキャラクターだとおもいます。
 「きゅうり」は運動が大好きで、とても健康的です。青々とした体を持ち、細かいことは気にせず、大胆でおおらかな性格の持ち主です。ガソリンスタンドで働く(!)若者です。そして故郷(南のきゅうり畑)や家族・親戚たちをとても愛しています。
 「帽子」は古い帽子で、中年から初老という感じでしょう。旅をしてきたのでしょう。豊富な人生経験を持ち、少し偏屈で、ばくちと酒とタバコが好き。とても汚いお部屋ですが、多くのカメを飼って暮らしています。
 「数字の2」は真面目で几帳面、神経質だけど、実は少し寂しがりやな青年です。役場で働いていて勤勉です。数字の14を父に、7を母に持ち、割り算で生まれ、兄弟たちもみんな2です。
 
 なんとなく、きゅうりや帽子や2というモノたちが、ひとだったならば、こういう性格をしていそうだと感じずにいられない。とてもうまく人格が与えられているなぁと感動してしまいました。

 江國香織さんはどちらかというと恋愛小説が有名なのですが、絵本やその翻訳なども書かれています。子どもももちろんですが、大人が楽しめる作品もあると思います。この「ホテルカクタス」は絵本ではありませんが、絵本みたいな感覚を味わえます。挿絵があるのですが、アパートの風景ばかりで、そこにきゅうりや帽子や2の姿はありません。もしかすると、人間の住んでいるアパートで、知らない間にきゅうりや帽子や2が仲良くなっているのかもしれませんね。

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