「死神の精度」
クールでとぼけた死神と6人の人間の人生を描いたものがたり
伊坂さんの話には、時折、特別な能力を持った人がさらりと出てくるけれど、この作品の主人公は「死神」だ。
「俺が仕事をすると決まって雨が降るんだ」
彼は「千葉」と呼ばれる死神で、仕事で人間の世界に来てから一度も晴れた空を見たことがない。
死神といっても、恐ろしい姿かたちで、マント×髑髏×鎌の死神ではない。人間の前に現れるときは、適当な年齢の人間になって人間界に現れる。死神の中でも調査員と呼ばれる彼らは「上」の指示で、死ぬ予定の人間を1週間観察し、死が「可」か「見送り」かを判断することが仕事。サラリーはないだろうが、会社員みたいだ。事故や災害などの不慮の事故で死んだ人間は、死神が「可」を出した人間なのである。彼らは人間に思い入れはないので、たいていは「可」を出す。「可」を出すまでなら、その1週間の間にその人間は死なないのも特徴。
面白いのは 人間に思い入れはないけれど、人間が作った「ミュージック」を偏愛しており、地上に降りたときは、仕事はそこそこにCDショップに立ち寄り、視聴機にかじりついているというところだ。ミュージックであればなんでもいいらしい。視聴機で何時間も動かない人物をみたら死神なのだ。
また、素手で触ると人間は失神するため、いつも手袋をしている。味覚もないし、痛みもない、空腹や睡眠もないようである。電波で電話を盗み聞きなんかもできるようだ。
彼らは、人間の使う修辞や例えが通じないので、会話がズレているところも面白い。「雨男」と聞いて「雪男はいつも雪が降っている男のことか?」なんて聞いたりする。
伊坂さん式の死神の設定がユニークでクールでおもしろい!一番のイチオシ部分。
ただ、死神という設定にもひかれるけれど、話自体もいい。一つ一つもそれぞれ面白いけれど、すべての章を通して読んだ後に、時の流れというか人間の人生の長さの重みのようなものが感じられるから不思議。最初と最後の話では、おそらく50年以上は時が過ぎているだろう。人間の死に興味はなく、時の長さや重みも感じることのない千葉だけれど、彼が過去に出会った人物たちが、時を経て交差する場面は、切ないけれど、とても清清しい。最後の「老婆対死神」の章は実に美しい。老婆の生き様も、最後に現れる突き抜けるような晴天も。 <死神の精度>
苦情対応のコールセンターで働く、藤木一恵に近づく千葉氏。彼女は、最近同じ客からしつこいクレームがかかってきており、どんどんエスカレートする電話に恐怖を感じている。人生をすべて諦めており、「死んでもいい」と思っている。そのため、千葉は今回も・・・。本書の時系列を示す重要人物のひとり。
<死神と藤田>
千葉は、やくざの藤田に近づく。彼は今時珍しい任侠の精神を持つヤクザらしく、子分の阿久津は崇拝しているが、仲間内からは疎まれている。ヤクザ同士の闘争に巻き込まれる千葉。
<吹雪に死神>
雪山の山荘で起こる連続殺人事件!に千葉は遭遇する。そこにいる一人の人間が彼の担当であるが、殺人で死んでいるからには、他の人間にも死神がついているのだろう。事件の全容が見えない中、千葉は探偵役をやってみる。王道のミステリが舞台ですが、オチがこの作品でなくてはない形なのも面白いトコロ。
<恋愛で死神>
千葉は、刺されて死のうとしている担当した萩原のそばに立っている。彼は古川朝美という女性に恋をしていた。1週間の間に、ストーカーに悩まされる朝美にようやく話しかけ、意気投合した矢先だった。この本で重要な1作。
<旅路を死神>
「旅行とはどんな行為を言うんだ?」
母親を刺し、通行人を殺害して逃亡途中の青年・森岡を車に乗せて逃亡する千葉。短絡的な森岡の話を淡々と聞きながら、北へ向かう。犯罪に走らせ狂わせてしまった、彼の幼い頃の悲劇が徐々に明らかになる。途中、「重力ピエロ」の春君が登場。そういえば「重力ピエロ」でもそういう人に会ったと彼は言っていたような気がする。
<死神対老女>
海辺の理髪店で髪を切ってもらった千葉。担当するその老婆に出し抜けに「あんた人間じゃないでしょ?」と見破られてしまう。若々しく、サバサバしている彼女は、父親、初恋の相手、夫、そして息子がすべて不慮の事故で亡くしていた(すべて死神絡みである)。彼女は千葉に若い客を連れてきて欲しいと理由は明かさずに頼む。
前編を通して一番美しい一作。
伊坂さんの話には、時折、特別な能力を持った人がさらりと出てくるけれど、この作品の主人公は「死神」だ。
「俺が仕事をすると決まって雨が降るんだ」
彼は「千葉」と呼ばれる死神で、仕事で人間の世界に来てから一度も晴れた空を見たことがない。
死神といっても、恐ろしい姿かたちで、マント×髑髏×鎌の死神ではない。人間の前に現れるときは、適当な年齢の人間になって人間界に現れる。死神の中でも調査員と呼ばれる彼らは「上」の指示で、死ぬ予定の人間を1週間観察し、死が「可」か「見送り」かを判断することが仕事。サラリーはないだろうが、会社員みたいだ。事故や災害などの不慮の事故で死んだ人間は、死神が「可」を出した人間なのである。彼らは人間に思い入れはないので、たいていは「可」を出す。「可」を出すまでなら、その1週間の間にその人間は死なないのも特徴。
面白いのは 人間に思い入れはないけれど、人間が作った「ミュージック」を偏愛しており、地上に降りたときは、仕事はそこそこにCDショップに立ち寄り、視聴機にかじりついているというところだ。ミュージックであればなんでもいいらしい。視聴機で何時間も動かない人物をみたら死神なのだ。
また、素手で触ると人間は失神するため、いつも手袋をしている。味覚もないし、痛みもない、空腹や睡眠もないようである。電波で電話を盗み聞きなんかもできるようだ。
彼らは、人間の使う修辞や例えが通じないので、会話がズレているところも面白い。「雨男」と聞いて「雪男はいつも雪が降っている男のことか?」なんて聞いたりする。
伊坂さん式の死神の設定がユニークでクールでおもしろい!一番のイチオシ部分。
ただ、死神という設定にもひかれるけれど、話自体もいい。一つ一つもそれぞれ面白いけれど、すべての章を通して読んだ後に、時の流れというか人間の人生の長さの重みのようなものが感じられるから不思議。最初と最後の話では、おそらく50年以上は時が過ぎているだろう。人間の死に興味はなく、時の長さや重みも感じることのない千葉だけれど、彼が過去に出会った人物たちが、時を経て交差する場面は、切ないけれど、とても清清しい。最後の「老婆対死神」の章は実に美しい。老婆の生き様も、最後に現れる突き抜けるような晴天も。 <死神の精度>
苦情対応のコールセンターで働く、藤木一恵に近づく千葉氏。彼女は、最近同じ客からしつこいクレームがかかってきており、どんどんエスカレートする電話に恐怖を感じている。人生をすべて諦めており、「死んでもいい」と思っている。そのため、千葉は今回も・・・。本書の時系列を示す重要人物のひとり。
<死神と藤田>
千葉は、やくざの藤田に近づく。彼は今時珍しい任侠の精神を持つヤクザらしく、子分の阿久津は崇拝しているが、仲間内からは疎まれている。ヤクザ同士の闘争に巻き込まれる千葉。
<吹雪に死神>
雪山の山荘で起こる連続殺人事件!に千葉は遭遇する。そこにいる一人の人間が彼の担当であるが、殺人で死んでいるからには、他の人間にも死神がついているのだろう。事件の全容が見えない中、千葉は探偵役をやってみる。王道のミステリが舞台ですが、オチがこの作品でなくてはない形なのも面白いトコロ。
<恋愛で死神>
千葉は、刺されて死のうとしている担当した萩原のそばに立っている。彼は古川朝美という女性に恋をしていた。1週間の間に、ストーカーに悩まされる朝美にようやく話しかけ、意気投合した矢先だった。この本で重要な1作。
<旅路を死神>
「旅行とはどんな行為を言うんだ?」
母親を刺し、通行人を殺害して逃亡途中の青年・森岡を車に乗せて逃亡する千葉。短絡的な森岡の話を淡々と聞きながら、北へ向かう。犯罪に走らせ狂わせてしまった、彼の幼い頃の悲劇が徐々に明らかになる。途中、「重力ピエロ」の春君が登場。そういえば「重力ピエロ」でもそういう人に会ったと彼は言っていたような気がする。
<死神対老女>
海辺の理髪店で髪を切ってもらった千葉。担当するその老婆に出し抜けに「あんた人間じゃないでしょ?」と見破られてしまう。若々しく、サバサバしている彼女は、父親、初恋の相手、夫、そして息子がすべて不慮の事故で亡くしていた(すべて死神絡みである)。彼女は千葉に若い客を連れてきて欲しいと理由は明かさずに頼む。
前編を通して一番美しい一作。
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