「狐闇」
旗師である・宇佐美陶子が、自分が陥った苦難と、歴史の大きな謎に迫る長編ミステリー。宇佐美陶子が出てくる作品は4作あるらしく、これは3つ目くらいのようだ。 1つ前に紹介した「凶笑面」(蓮杖那智シリーズ)の「双死神」とリンクしており、その他いくつかの別作品の登場人物も出てくるという、順番に読んでいる人にはたまらないであろう1冊。
宇佐美陶子は「冬孤堂」と呼ばれる骨董業者。店舗は持たずに、市で競り落とした美術・骨董品を他の業者や個人に転売する旗師である。彼女はとある市で青銅鏡を落札する。しかし、この鏡は市に出るはずのない「三角縁神獣鏡」だった。この魔境に関わったせいで、何者かに交通事故にあわせられ運転免許を剥奪される。その上、贋作つくりの疑いをかけられ骨董業者の免許である「鑑札」を剥奪されてしまう。また、鏡に関わった2名が謎の死をとげてしまう。
様々なものを失った陶子は、自分を陥れた何かに立ち向かう決心をする。
ここで、青銅鏡の謎と、徐々に浮かび上がってくるのが「税所コレクション」の謎である。
税所コレクションとは、明治時代・堺県の県令であった税所篤が集めた骨董品であり、宮内庁管轄である「大仙古墳(仁徳天皇陵)」を盗掘したのではないかという、大きな疑惑と探るには危険すぎるもの。陶子は、友人の硝子や、民俗学者の蓮杖、骨董業者の雅蘭堂たちの大きな協力を得て、税所コレクションと、自分を落としいれようとする者たちの目的を暴いていく、スリリングな話である。
私は、大仙古墳の真隣にあった大学に4年間通っていたという点で、非常に興味をひかれた。4年間、さほど古墳の歴史について何も知らず、横から見てしまえば、ただ青々とした山というか森のような存在だっただけに・・・。税所篤という人もはじめて知った。彼は、私欲のために遺跡を荒らした悪人か、廃仏稀釈から遺跡や遺品をぎりぎりのやり方で守った善人か、2つの見方をしていたところがおもしろかった。
事件をめぐって、陶子と、犯人達が互いに相手を崩すために用意する切り札が、実際に現在起こった事件だけでなく、歴史上の解釈まで含んでいるため、難解で何の事件を探っているのかわからなくなりそうだった。歴史の謎と事件の謎、両方を追うとても深くて面白い作品だった。
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