☆4040の本棚☆ 文庫とミステリに偏っている私的な読んだ本のおぼえ書きです。
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2005.11
17
(Thu)

「プラナリア」 


山本 文緒 / 文藝春秋(2000/10)
Amazonランキング:19,817位
Amazonおすすめ度:



 直木賞受賞作、短編集です。
 どこにでもとは言わないけれど、どこかにありそうな人と生活が描かれています。自分の人生にまったく満足することなく、自堕落に生きるか、流されて生きているか。

 表題の「プラナリア」は扁形動物。淡水に棲むヒルみたいなもので、なんと切ったらそこから再生するという恐ろしい生き物。二つに切れば、尻尾からは頭、頭からは尻尾がちゃんと生えて2匹になる。3つに切ったら、まんなかの部分は両方頭になるのだろうか。猟奇的だ。
 高校の生き物好きの生物の先生が捕まえてきて見せてくれた。1匹しかいないので切ってみたいけれど切れないと言っていた。切れば2匹に増えるが、失敗して死んでしまうのが怖かったからだ。

 そんなことはどうでもいいとして、以下の作品が収録されています。
「プラナリア」
「ネイキッド」
「どこかではないここ」
「囚われ人のジレンマ」
「あいあるあした」


 下にどんな話だったかざっと書きますけど、何気ない日常、生活、自堕落な人の人生。そんな日常からなにを読み取ればいいのだろうとか、いつも考えていました。
 社会を見るときには二つのアプローチがある。文学と学問だ。」と、ゼミの先生が言われました。学問的に見るのは私もやっていることで、誰にでもある程度できること。でも文学として社会を見ることは感性がないとできない。
 これを聞いて、角田光代とか、「空港にて」とか、この「プラナリア」とか、なにを読み取ればいいのだろうと思っていたのは、なにかを感じ取るというよりも、現在の世の中を見ていると考えたらいいのかなと思いました。
 これらの文章の中の生活や、恋愛や人生は、現在を生きる人たちを、物語として映し出しているわけで、なにか感じることがよく分からなくても、今の社会を分かりやすく見ることができるからおもしろいなぁと感じてしまうのかなぁ、と。
 最近、そういう話をつむぎだすことで、その中に人や社会の形を映し出せる力って本当にすごいと感じています。
 
 そういう見方からも、このプラナリアは本当によく描かれているなと感じました。おもしろかったです。
「プラナリア」
 春香は生まれ変わるならプラナリアになりたいという。彼女は若くして乳がんになり、乳房を取り払ってしまった。そこから仕事も殆どせず、自堕落に過ごしている。彼女は「私、乳がんだから」と悪びれずに周りに言う。乳がんは、自分の唯一の特徴であり、そして何もしない、する気がない、するのが怖い、そういうことの言い訳として使われる言葉だ。年下の彼氏や家族は「もう乳がんは忘れろ、昔のことだ。」という。それは本当であり、立ち止まっている場合でもない。でも、彼女にとっては薬の副作用など、まだ現実でもある。
 同じ入院患者で、興味を抱いていた女性と関わることで、社会に戻れるきっかけをつかんだかのように思えたけれど、かいがいしく世話を焼いてくれる彼女に幻滅を感じてしまい、仕事をやめてしまう。
 人には人の考え方ややり方があるから、それを全部否定してはいけないと分かりつつも、結局、いらだち、距離を置いてしまう春香。他人も受け入れられず、自分を支えることもできないのに、強がりな彼女にいらだちも感じましたが、悲しいなぁとも感じました。

「ネイキッド」
 ここ2年ほど何もせずに暮らしている泉水。離婚した上、夫と同じ会社だったため失業してしまったのだ。なんにもやる気になれない日々。あまりのやる気のなさに、親友も困り果てて距離を置いてしまう。
 その中で、元後輩の男の子に会う。自分を負け犬だという彼をみて、自尊心が傷つきつつも、久しぶりに誰かに頼ることの心地よさを感じていく。実は泉水は、昔はバリバリのキャリアウーマンで、ずっと真面目に生きてきたし、仕事も精力的にやってきた女性だったのだ。それが、仕事があだになり、夫との間に溝ができ、全てをなくしてしまったのだ。
 昔のつてで手に入るかもしれない、昔のような仕事と日々。しかし、どうしても戻るための踏ん切りがつかない。
 親友と仲直りし、いままで自分が守ってきた親友に、守られる、頼るようになってしまった。強い自分を保つことで傷つかないようにしてきた。人に頼れなくて、また同じような社会に出て傷つくのが怖くて、次の一歩が踏み出せなくて涙を流してしまう。
 プラナリア同様、働いていない女性の話ですが、一度落胆を味わっている人です。次に進むのが怖い。こんな思いの人もたくさんいるのだろうなぁ。

「どこかではないここ」
 「私」は主婦。息子は大学生で実家に住んでいるが奔放に暮らす。高校生の娘はバイトをし、進学せずに働くという。もう4日も家に帰らない。いくら心配しても子どもたちは自分の思うとおりにならない。かわいそうに思うくらいだ。
 夫はリストラされ、給料が減ってしまった。そのため私は夜10時から2時までスーパーのレジのパートに出ている。夫は不満はさほどないが、やはりもっと気遣いがあってもいいのではと思う。
 実家の母は、一人暮らしで、行けば来なくていいと、いかなければ見捨てられたとわがまま放題。5日に一度見舞いに行かねばならない、夫の父親は痴呆である。
 そのような忙殺される主婦の日々である。
 娘に突然、家との決別と、知り合いを頼り、働きに出ると宣言される。「お母さんのようになりたくない」。感謝しているけれど、家にいるのも母親の顔を見るのも憂鬱でイライラする。毎日の生活やりくりと家族のことばかりに気をもんで暮らす母親の姿を見て感じた娘の本音も、しかたのないこと。でも母親にとってはそれはかなりショックなことだろう。
「私」は糸が切れた。ふっきれたという前向きなものより、あきらめたというほうが正しそうだ。息子には一切金は出せないと言い放ち、日々を本当に「こなす」ようになった。
 
 この話が一番「怖かった」。主婦でも、母親でも、自分の考えていたように家族の将来が進まない、気づけばつまらない毎日だ。私は何のために働いているのだろう・・・。

「 囚われ人のジレンマ」
 美都は社会人で、大学院で勉強をしている朝丘とつきあっている。朝丘はバイトもせず、遊びもせず、純粋に勉強に打ち込んでいる変わった青年で、美都はそこに惹かれてつきあっていた。しかし、彼は、稼ぎもないうちから「結婚」をちらつかせる。しかし、それを口に出すと相手は怒り出すから、なんとなく話題を避ける。
 威圧的で厳しい父親、将来の不透明な恋人、浮気と仕事。そういうものにつぶされそうな日々。
 朝丘が、結婚するために母親をつかい、彼の何もかもの資金源が両親だったことに気がつき、彼と別れることを決める美都。
 結局、自分も親に依存して暮らし、お互いにどうすれば自分が得をするか必死で考えながらすごしてきたのだと気づいたのだ。

 どきっとしちゃいますね(汗)恋愛が損得勘定。。。

「あいあるあした」
 真島誠は居酒屋を営んでいる。サラリーマンをやめ、常連ではなくても一人でも入れるような居酒屋を作った。だから客とも深い関係や会話はしない。
 客の一人のすみ江は実は恋人であるが、正体はよく分からない。いつも居酒屋の席で手相を見ていて、なぜかそれが大評判である。
 すみ江は、実は男を移り歩いてきたであろう女で、今も仕事はしていないし、なにかに落ち着く気もなさそうである。
 真島は実は昔結婚しており、12歳になる娘がいる、娘とは3ヶ月に一度髪を切ってあげる約束で会うことになっている。娘は一番大事でかけがえのない存在であるが、大人になっていく娘が遠くなるようで悲しい。
 かわいそうだと、さみしいひとなんだと周りの人のことを認識していたけれど、本当は自分が寂しかったのだ。

 短編集の中で、一番最後がすこし暖かい終わり方の話でした。現状は良好ではないけれど、大切なものを真島さんは見つけることができたようです。
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