「スノードーム」
アレックス シアラー, Alex Shearer, 石田 文子 / 求龍堂(2005/01)
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話は、科学者であるチャーリーの語りから始まる。
チャーリーの同僚、若い科学者のクリストファー。彼は「光の減速器」という途方もない研究をしている変わり者だった。人付き合いがなく、研究ばかりしている。その彼が、ガラスの置物と原稿を残し、突然失踪してしまった。ガラスの置物は、よくある液体と雪に見立てた飾りがはいったドームによく似ているもので、クリスはそれを誰にも触れさせず、机に固定するほど大切にしていた。異常なくらい大切にしていたドームなのに、クリスはそれを置いて消えてしまった。そして、原稿のほうにはクリスが書いたある物語が書かれていた。
その物語が話の本編。
話には、幼いクリス、売れない画家の父。踊り子をして生計を立てる女性ポッピー。ポッピーに思いを寄せる彫刻家エックマン氏。
すばらしい微細な彫刻を作るエックマン氏の憎しみ、クリスの愛。
彼らの信じられないような話がそこには描かれていた。
話を読み終えたチャーリーはなにを思っただろうか。
ただの研究に失敗し、失踪した科学者の戯言か。
悲しい運命と愛の真実か。
残された選択肢はとても大きかった。
「チョコレートアンダーグラウンド」「青空の向こう」など、シアラーの作品は児童文学というイメージが強かった。子どもはもちろん大人もおもしろいと思える作品。でも「スノードーム」はすこし違う。人間の悲しい面や、そこから生まれる愛情について描かれていて、子どもには難しい内容だと思う。家族愛や、別れを書いて愛情を単に表現しているものとはすこし違う。人間の本質的な所、醜いところ、そういうところを描くことで愛を表現している。
原題は『The Speed of the Dark』〜闇の速度〜。
「スノードーム」はエックマンとクリスにとっての重要な世界。
闇の速度はその鍵となるキーワードだ。
彼らの運命がだんだん暗い方向に進んでいる雰囲気をかもし出している題名だと思う。
話の展開もおもしろかったし、とても心に残る内容でした。
寒い冬に、しんみりする話はどうでしょうか。 エックマン氏は、今までのシアラーの作品を思い浮かべて読んでいたせいか、すごく作品に似つかわしくないような印象をはじめは持ちました。顕微鏡でしか見れないほど微細な彫刻を作るすばらしい芸術家。でも、彼は、自信家で自己顕示欲が強く、自己中心的で身勝手。自分の容姿にコンプレックスを抱き、いつも回りの人間を受け入れず、憎しみをもっていた。思いを寄せるポッピーの自分への思いを勘違いしたり、善意が「施し」でしかなかったりと、読んでいるだけでも痛々しく、嫌な人物にしか映らなかった。
挙句の果てに、クリスの父とポッピーに対するあの仕打ち。全てを思い通りにしようとする彼に憤懣してしまう。
でも、エックマン氏はすごく悲しい存在だと思えた。今まで彼を愛して、受け入れてくれる人がいたならば、彼はああならなかったと思う。自分が神のように全てを手中に収めても、自分の欲しかった愛は手に入らなかったのだ。
でも、クリスだけは彼を受け止めてくれていた唯一の人間だった。でも彼はクリスへの本当の愛情と、クリスを苦しめている元凶である自分と、クリスを自分の息子として動かしたいとする自分との間でもがいていた。きちんと相手と向き合うことができないエックマン氏はすごく悲しい。でもそんな人はたくさんいるのかもしれない。
クリスは家族をいきなりなくし、エックマン氏にたまに反抗心を持ちながらも、エックマン氏を信頼していた。でも、エックマン氏に怒りや憎しみを抱かざるを得なくなってしまう。
自分の大切なものを守るために研究を続けて、時間が足りないことをさとった最後のクリスの選択はすごいものだった。大切な家族と過ごすために現実を捨てるか、現実にとどまるために家族との時間を失うか。とても重い選択を選んだクリスがとてもかわいそうで切ない。けれどクリスの周りの人に対する愛情が表れていて、とても綺麗なおわりかただと思った。
でも、最後の最後、チャーリーに託された重大な選択と任務は、すごく残酷というか、重々しかった。全ての悲劇と愛情の重要な鍵を、まったく関係のなかったチャーリーは負うことになったのだから。
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