☆4040の本棚☆ 文庫とミステリに偏っている私的な読んだ本のおぼえ書きです。
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2006.01
25
(Wed)

「手紙」 


東野 圭吾 / 毎日新聞社(2003/03)
Amazonランキング:5,547位
Amazonおすすめ度:


 
 困窮した生活の末、弟の大学進学を実現させるために、強盗に入った兄・剛志。しかし思いがけず、老女を殺害してしまった。
 弟・武島直貴の元には、それ以来、月に一度刑務所から兄からの手紙が届くようになった。直貴の生活は一変。「強盗殺人犯の弟」ということで、進学も、夢も、就職も、恋愛も、ことごとくうまくいかなくなってしまった。前向きに生きているように見えても、周りの「差別」が付きまとう。兄への言いようのない憎しみ。次第に呑気な兄の手紙を、直貴は読まずに捨てて行くようになる・・・。

 
 お勧めを受けたので、早速読んでみました。
ミステリーではなく、犯罪者の家族の視点から描かれた物語です。
しかも、よくある報道のされ方や偏見のつらさという内容ではありません。加害者家族が負う困難や、加害者自身が負わなければならない罪、そして彼らが受ける差別の意味を問いかける内容でした。
 毎月送られてくる兄の手紙を通し、事件を、そして兄をどう捉えていくのかがとても気がかりで、目が離せず、一気に読みました。ラストの終わらせ方も、すばらしかったと思います。涙モノです。
 露骨ないじめのような仕打ちを受けることは少なかった直貴。しかし、兄の存在を知った途端、よそよそしくなり、壁を作られてしまう。同級生、バイト先の店長、勤め先の同僚・・・。誰も排除はしないが、手を差し伸べてくれることはないという厳しい状況。
 中には、恋人の親や、夢だった歌手デビューの際のレコード会社、会社の部署異動など、露骨に差別を受ける状況になったこともあった。兄という存在があることで、周りから「不当な」扱いを受けることになる。
 それは仕方のないこと・・・。手に入れたいと思わずに諦めるしかないと感じてきた彼。

 しかし、社長の言葉で考えが変わる。
 ―社長が言ったことは、差別がなくなることはないということだった。・・・どうしようもないこと・・・。
 周囲の人間が、強盗殺人犯や、その家族と関わりたくないと思うのは仕方のないこと。犯人は罪を犯したことで、自ら社会的な死を選んだことになる。犯人の家族が受けている困難は、犯人自身の刑の一部なのである。周りの人間は、罪を犯せば家族が苦しむことになると思い知らせるためにも、差別しなくてはいけないと言ってしまってもいい。周囲の人間を恨むのは筋違いで、罪を犯した者を憎みなさい。
 就職などで断られたりすること。これは、「犯罪者の血」が流れているという非科学的な差別ではない。周りの者は、関わる際に非常に気を遣うことになる。露骨な態度は道徳に反するから、距離を置く。周囲の人が受ける「逆差別」である―

―その状況を打開するには、直貴自身が、人間関係をひとつひとつ作るしかない―。
 
 直貴は、信頼できる相手と結婚し、娘もできた。しかし、「差別」の魔の手は妻だけではなく、娘までに伸びていた。
 正直に、正々堂々と生きてきた直貴。しかしそうすることが逆に周囲や家族を苦しめることにもなる。これも社長の「忠告」。
 娘がひったくりにあい怪我をした。その家族が再三誤る姿を見て、直貴は悟る。正々堂々生きることは、自分を納得させる「楽」な道でしかなかったのだと。

 直貴は、意を決して、兄に「最後の手紙」を書く。兄との訣別を誓ったのだ。
 それから仕事をやめ、新天地で1から、全てを隠して生きることに決めた。
 でも、それで全ての終わりではなかった。

 被害者宅を始めて訪れた直貴。当然ながら、被害者家族は許してくれなかった。しかし、被害社宅にも届けられていた「兄の手紙」の存在を知る。兄は、直貴の最後の手紙を送った後に、被害者への手紙も最後にしていた。兄は、一方的に縁を切られたことに腹を立てたりはしていなかった。自分が弟を苦しめたことに非常に衝撃を受け、「手紙など書くべきではなかった」と、後悔していたのである。結局自己満足でしかなく、不快感を与える存在でしかなかったと・・・。
 直貴は、それを読み、「それは違う」と思う。兄の手紙が、苦しみの中で自分の道を見つける手がかりだったのだと悟る。

 
 実に深い内容でした。加害者家族が受ける「不当」な処置。そんなことに関わることのない私にとっては、そういう扱いは不当だと感じるけれど、それは奇麗事でしかない。犯罪を犯すということは、自分の家族にも、そして家族に関わる人たちにも大きなストレスを与えるものなんだ・・・。
 被害者に許されることはないし、特に自分が犯人でない場合、自分はどうするべきか非常に微妙な立場だと思う。自分が罪を犯した家族にすることは、唯一の助け舟を出すことだけではない。
 心を鬼にして、本人に罪の重大さを実感させ、そして、自分を守るために、関係を絶つこともひとつの選択なのだ。
 
 罪について、イロイロと考えさせられるすごく深い話でした。
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コメント

 

>よっちゃんさん
社長の言葉には、本当に唸らされました。
いつもトリックのおもしろさを追いがちなミステリィですが、
このように「深い」作品を書く作家もいるのだと知り、本当に驚きました。
直木賞受賞作も、なんとかして読みたいです(がお金がありません;;)文庫化は遠いですね・・・。

 

この作品でもっとも印象的なのはご紹介された社長の言葉ですね。ドキッとさせられる見解でしかも説得性があります。
東野圭吾は本格ミステリーで直木賞をとりましたが文芸作品であるこれがふさわしかったのじゃないかと思っています。

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(書評)手紙 

著者:東野圭吾 二人だけの兄弟・武島剛志と直貴。剛志は、弟を大学に行かせたいがた
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