「蛇を踏む」
川上さんがいうところの「うそばなし」を集めた作品集。
繰り広げられる世界は、どこか現実のようで非現実的だ。
川上さんの空想の世界がこの本の中には広がっている。
**蛇を踏む』
表題作「蛇を踏む」は96年の芥川賞受賞作品。
サナダヒワ子は、仕事に行く途中、蛇を踏んでしまった。
蛇は「踏まれたので仕方ありません」と語り、溶けて女性の姿になり、ヒワ子の家に住み着くようになった。
勤め先のカナカナ堂の女主人もずっと蛇と暮らしているという。
主人は、妻のそんな姿に危機感を抱き、ヒワ子に蛇を追い出すように進める。
しかし、ヒワ子は、事態をそのままにしておく。
すると、蛇は「蛇の世界に来ないか」と執拗に誘うようになる。
解釈が難しい作品でした。蛇という気持ちの悪い存在。蛇が人間に化けるという面妖さ。蛇に絡めて考える自分の体験。なんでも知らない振りを通してきたヒワ子に襲い掛かる蛇との戦い。
不思議な雰囲気で、緊迫したまま、幕は閉じる。そこから、先のことはわからない。
**『消える』
巨大なヒカリ団地。そこは、家族ごとに家族の慣わしが色濃い場所。
父母と、二人の兄、私の5人家族。
結婚を控えた長兄は、ある日突然消えた。いるのであるが、姿は見えない。曾祖母も消えたことがあるという。日々の暮らしは何事もなかったように過ぎる。誰も兄が消えたことを気にしていない。
長兄の変わりに次兄のもとに嫁いできたヒロコは、新しい家族の風習や空気になじめず、次第に縮んでいく。
家宝のゴシキという壷は、姿を消した後も鳴き続ける。
「私」ももうじき嫁ぐことになった。体が膨張していく。長兄はそれをなでてくれる。
おかしな家族ごとにあるきまりごとや、風習、秘密。そういう家族ごとの世界が何の疑問もなく淡々と語られる。消えること、ゴシキ、結婚の風習、祭り、管狐、縮む・・・。
何かが消え、変化しても、家族はそれを気にすることなく、毎日を過ごしていく。なんだかさびしい話でもあった。
**『惜夜記(あたらよき)』
19の小さな作品からなる話。夜の世界。夜というか、まるで不思議な夢を見るような話だった。
偶数番号の話は、一応続いている。私と少女の話だ。夜の世界で流されながら、少女を追い、突き放し、争い、求める。
奇数番号はばらばらであるが、夜の世界の不思議な話ばかりである。悪夢のようなものもあれば、結局さっきのはなんだったのだろうというものもある。
じつに不可解な夢を見ている気分になる話だった。
不思議な世界感を持った作品だから、そこに意味を求めようとしたり、意味の分からない文章が並ぶのを見るのが苦手だったりするならば、この話はちょっとおもしろくないと感じてしまうかもしれない。
夢の中であるとか、空想した世界を文で形にして見ることができるというのがうらやましいと感じる。
雰囲気を楽しんだ話だった。
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