「沈黙博物館」
博物館技師の僕が雇われた先は小さな村の屋敷。
依頼主は偏屈な老婆。
老婆が作りたい博物館は、村の人間が死ぬたびに集めてきた「形見」の博物館だった。
「私が求めたのは、その肉体が間違いなく存在しておったという証拠を、最も生々しく、最も忠実に記憶する品なのだ。それがなければ、せっかくの生きた歳月の積み重ねが根底から崩れてしまうような、死の完結を永遠に阻止してしまうような何かなのだ。」
高圧的な老婆に罵倒されながら、膨大な量の形見を整理し、博物館の構想を練る。そして、老婆の代わりに死者が出るたびに形見となるものを盗みにいく。そのような日々が始まった。
老女の娘や、同居する庭師、沈黙の伝道師とのかかわり。そして心にひっかかる殺人事件と、僕の兄の存在。そういうものも織り交ぜながら「沈黙博物館」は完成へと向かっていく。
ストーリというより、世界観にひき込まれました。
日本であるとか、時代がいつであるとか定かではない。ヨーロッパのような雰囲気もあれば、現代のような雰囲気もある。土着の伝統のような雰囲気もある。
死者の形見の収集という、異様な仕事。
老婆に圧倒されながらも、のめりこむ博物館や形見たちへの思い。
自分の内側からなにも発することがない沈黙の伝道師。
母の形見の「アンネの日記」、兄との思い出の詰まった顕微鏡。
死や悲しい雰囲気に満たされていて、表紙のように、ずっと頭の中は灰色だった。死は完結で、モノは朽ち果てる。そのモノを保存し、意味を与え、死を完結させないようにする。
その行為に意味はあるのか?私たちはなぜモノに意味をこめるんだろう?そういうものの答えをだす話ではないけれど、そのことについて巣こそ考えました。
暗い、物悲しい雰囲気で、不思議な世界観。私は好きでした。こういう雰囲気を楽しみたい人にはお勧めです。
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