* bookmarker's bookshelf *

☆4040の本棚☆ 文庫とミステリに偏っている私的な読んだ本のおぼえ書きです。

人生ベストテン


角田 光代
Amazonランキング:398291位
Amazonおすすめ度:



 角田さんの恋愛短編6編収録。
この本も、ちょっと飽き飽きした自分の人生にちょっとしたドラマが起こったり起こしたりするけれど、なんだかんだで現状打破ってそんなにできないのよね・・・というのを感じさせる短編である。
 
「床下の日常」 水漏れの工事現場のマンションで、陰気な人妻から昼食に誘われた若者が、あれこれ考えてしまう話。
「観光旅行」 恋人と訣別するためイタリアに旅行した女性。その先で喧嘩ばかりしている日本人の偏屈な母親と、少々鬱陶しい娘に付きまとわれるハメに。
「飛行機と水族館」 海外から帰る飛行機で隣りに座っていた女性が泣きながら自分の失恋について語ってきた。はじめ鬱陶しかった彼女が、帰国後気になってしまい、様子を伺おうとする。
「テラスでお茶を」 男とのダラダラした関係を断ち切り、出直すために中古マンションを探し始めた女の話。
「人生ベストテン」 もうすぐ40歳なのに、恋すらしていないことを猛烈にあせりを感じた女性。久しぶりの同窓会ではじめての彼氏と再会するが・・・
「貸し出しデート」 夫以外の男を知らない主婦が、お金を払い、若い男とデートしてみることに。しかし来たのは自意識過剰の冴えない若者だった。

「狐闇」


北森 鴻
Amazonランキング:530025位
Amazonおすすめ度:



 旗師である・宇佐美陶子が、自分が陥った苦難と、歴史の大きな謎に迫る長編ミステリー。宇佐美陶子が出てくる作品は4作あるらしく、これは3つ目くらいのようだ。 1つ前に紹介した「凶笑面」(蓮杖那智シリーズ)の「双死神」とリンクしており、その他いくつかの別作品の登場人物も出てくるという、順番に読んでいる人にはたまらないであろう1冊。

 宇佐美陶子は「冬孤堂」と呼ばれる骨董業者。店舗は持たずに、市で競り落とした美術・骨董品を他の業者や個人に転売する旗師である。彼女はとある市で青銅鏡を落札する。しかし、この鏡は市に出るはずのない「三角縁神獣鏡」だった。この魔境に関わったせいで、何者かに交通事故にあわせられ運転免許を剥奪される。その上、贋作つくりの疑いをかけられ骨董業者の免許である「鑑札」を剥奪されてしまう。また、鏡に関わった2名が謎の死をとげてしまう。
 様々なものを失った陶子は、自分を陥れた何かに立ち向かう決心をする。
 ここで、青銅鏡の謎と、徐々に浮かび上がってくるのが「税所コレクション」の謎である。
税所コレクションとは、明治時代・堺県の県令であった税所篤が集めた骨董品であり、宮内庁管轄である「大仙古墳(仁徳天皇陵)」を盗掘したのではないかという、大きな疑惑と探るには危険すぎるもの。陶子は、友人の硝子や、民俗学者の蓮杖、骨董業者の雅蘭堂たちの大きな協力を得て、税所コレクションと、自分を落としいれようとする者たちの目的を暴いていく、スリリングな話である。

 私は、大仙古墳の真隣にあった大学に4年間通っていたという点で、非常に興味をひかれた。4年間、さほど古墳の歴史について何も知らず、横から見てしまえば、ただ青々とした山というか森のような存在だっただけに・・・。税所篤という人もはじめて知った。彼は、私欲のために遺跡を荒らした悪人か、廃仏稀釈から遺跡や遺品をぎりぎりのやり方で守った善人か、2つの見方をしていたところがおもしろかった。

 事件をめぐって、陶子と、犯人達が互いに相手を崩すために用意する切り札が、実際に現在起こった事件だけでなく、歴史上の解釈まで含んでいるため、難解で何の事件を探っているのかわからなくなりそうだった。歴史の謎と事件の謎、両方を追うとても深くて面白い作品だった。
 

「凶笑面」

 民俗学者・蓮杖那智が解決する、民俗学に詳しくなれる!?ミステリー 



 民俗学教授である蓮丈那智と、助手の内藤三國が、民俗学のフィールドワーク先で出会う事件を解く、民俗学を盛り込んだ異色ミステリー。シリーズ化されており、この本はすべて5作の短編が収録されている。
  伝説があるところに偶然事件が起こったり、伝説を巡り事件が起こったり、舞台は様々。短編だけれども、事件についても、民俗学についても初心者にも分かりやすくコンパクトにまとまっているところがすごい。民俗学というと、漠然と柳田國男・・・くらいしか想像がつかない世界。読んでみると、学校で習う歴史程度で分かることもあるけれど、日本に散らばる伝説や風習も多々出てくる。ちょっと不気味な感じがするけれど、事件はさほど大きくないので、民俗学の知識がおもしろく感じた。

 なかなかなじめなかったのは、蓮杖那智と内藤三國のキャラクター。蓮杖は異端の研究者であり、頭脳明晰な氷の美女。彼女の口調や存在がこの短編1冊ではまだまだ人間味が少なくて慣れれなかった。「狐闇」という、蓮杖が出てくる別の作品があるけれど、そちらを読んだり、これから続刊を読めば愛着もわいてきそうである。


「鬼封会」
 ストーカーに関連する殺人事件。旧家に伝わる異色の「鬼封会」、明治の廃仏稀釈運動にまで説明が及ぶ。 

「凶笑面」
 謎の禍々しい面「凶笑面」をめぐる殺人事件。面とは何を表すのか、蘇民将来伝説。

「不帰屋」
 旧家に残された建造物は何を意図して作られたのか?そこで起こった殺人事件。

「双死神」
 内藤に製鉄民族の遺跡があると共同研究を持ちかけてきた者が殺される事件。製鉄民族・だいだらぼっち伝説、そして古墳から掘り出されたという「税所コレクション」と謎めいた案件が山盛りの章。
 これは北森さんの「狐闇」という作品の一部を内藤側から描いた1作。是非「狐闇」を読むことをオススメする。

「邪宗仏」
 とある秘仏をめぐって起こった殺人事件。「聖徳太子はキリストだった!?」など、突拍子もないような説が出る所以、日本に密かに伝わっていたキリスト教について。

「ドラママチ」



角田 光代
Amazonランキング:133708位
Amazonおすすめ度:



 そこらへんにいそうな、あまりぱっとしない女性の日常をうまく書いてくれる角田さん。きっと、それがどうした、つまらんと思う人も多いと思う。ありふれた日常、けだるさなんてどこにでもあるだけ、誰にでもかけそうだけど、主人公がどんな人で誰とであってどんな話をするのか、その組み合わせがおもしろくなかったら、本当にぱっとしない会話だったらつまらない話にかならない。この倦怠感を書ける角田さんは凄い人だと思う。
 私が、このようなけだるい話を好き好んで(というわけでもないけど)読んでいる理由はよく分からない。自分はこの人たちみたいにはならないぞとでも思っているんだろうか?まぁいいや。

 ドラママチは、8人のなにかを「待つ」女の短編。子供ができるのを待つ女、不倫していて男を待つ女、倦怠感溢れる夫婦生活になにかドラマが起こらないか待つ女、強烈な姑とのワカレを待つ女・・・・などなど。30代半ばから後半と思われる、既婚・未婚、なんだか幸薄なけだるい女達の話ばっかり。

 まだ20代なので、こうなったらやだなぁ位ですむが、30代で読むときついのかもしれないし、優越感(本に対してか?)に浸れるのかもしれない。

 8つに共通しているのが、喫茶店、しかも昔からあるTHE喫茶店が出てくるところか。

 現状に、飽き飽きし、嫌気が差し、なにか違う展開を思い描いてはいるけれど、結局は現状に戻ってくるしかないのだ。文や設定がリアルというのもあるけれど、みんないつも諦めて現状にとどまって生きていることが多いんだなということが書かれているから、余計リアルだなと感じるんだと思った。

「送り火」

 哀愁があり、どこか不気味なのに暖かな”アーバンホラー”
 

重松 清
Amazonランキング:394831位
Amazonおすすめ度:



 重松さんの話は、(まだ数作しか読んだことがないけれど)人間味というか人情に溢れている。
中には、イジメなどの人間の弱いところをついた作品もある。それを一旦読むと、しばらくの間その話しについて悶々と考えてしまいそうなので、なかなか手をつけていなかった。
 この「送り火」は短編なのでそんなに気負いせず読めそうなので借りた。

 舞台は東京からベッドタウンに伸びる富士見線の沿線。(富士見線は実在しないのですね)
帯に「アーバンホラー」と書かれている。現代の都会で暮らす人々に起こる、少し不気味で、でも暖かいところもある不思議な短編ばかりだ。最初の2作はホラーテイストだけれど、あとはそうでもない。怖くなくてしんみりする、なかなか面白い本だった。

□フジミ荘奇譚
 行き場をなくし、ホームレス寸前の男が住み始めた古いアパート。そこには不気味な老婆が5人暮らしている。老婆と猫。不気味なことこの上なし。一度は金と引き換えにアパートを燃やそうとする男であるが・・・。

□ハードラック・ウーマン
 売れないライターの由紀子。町の噂のネタに行き詰まり、駅にいるホームレスの老婆に「富士見地蔵」と名づけ、拝むとご利益があるという記事を掲載した。すると瞬く間に噂はブームを起こし…。
人生に行き詰った女性にちょっとしたヒヤリ体験。

 老婆モノ2作連続は恐ろしい。

□かげぜん
 夫婦は6歳で息子を失った。1年がたち、笑顔も戻りつつある二人だが、妻が少し思いつめ気味だ。息子宛に未だ届くDMをしまい、かげぜんを据えるのはまだよいが、ランドセルを買い、近所の子供に背負ってもらったりしはじめた。いなくなった現実を受け止めるつらさを描いた1作。
 (あまり関係がないけれど、自分を含め営利で送りつけているDMが受け取る人によっては思い意味を持ってしまうんだなぁ・・・)
 
□漂流記
 仕事をやめ、家庭に入り、新しいマンションに引っ越してきた女性。公園デビューを果たすが、序列関係や自分のこどもをまったく関係のないあだ名で呼ばれることにストレスを感じ、次の公園へ。
 マンションに伝わる不気味な感じが結局なんだったか分からなかった。

□よーそろ
 実直な富士見追分駅の駅員原島。彼は自殺をしようとする人を嗅ぎつけては止めてきた。
一方、小学生の太郎はイジメに悩み、それを親に打ち明けられずにいた。彼を元気付けていたのは、とある「冒険家」のひよわな日本人に対する熱意に溢れたメッセージだった。
 太郎が折れそうになったとき、原島と冒険家が救いの手を差し伸べる。

□シド・ヴィシャスから遠く離れて
 かつてパンクバンドとして勢いのあった男に、敬一は再会する。敬一はパンクへの熱い思いを語る伝説のライターだった。しかし、再会した双方とも以前の面影はまったくなかった。そこへかつて敬一が書いた文章を心から尊敬している男を紹介される。
 夢を棄てた大人と、棄てきれず、それでいて前に進めない大人。苦いけれど前に進むしかないのだ。

□送り火
 弥生子は一人でくらす母親に同居をして欲しいと頼むため実家に向かう。彼女は今は廃れて閉園した遊園地と、そのそばの実家が大嫌いだった。自分のために無理をして働き、住まいを買い、そして過労で死んでしまった父親がわかってはいても理解できなかった。幼い自分、母の寂しさと、家への思い、そして父への思いが、閉園した遊園地をぼうっと照らす。
 
□家路
 妻と積もり積もった互いの瑣末な不満が噴出し、家を出た男。毎日家に「帰りたくない」男に、家に「帰れなくなった」男が話しかけてくる。男は駅で急病で亡くなった幽霊だった。
 こういうオッサン話嫌いじゃないな。

□もういくつ寝ると
 両親の墓を決めに行く娘とその夫。娘は富士山が見える墓にこだわるが、夫はあまり興味がない。子供の墓を探す若い夫婦、自分がひとりで入る墓を探しにきた老人。「お隣」の事情は様々である。
 娘は次第に夫と、その家族の墓には入りたくないなと思い始める。

「蒲公英草紙―常野物語」



  以前読んだ「光の帝国」とおなじ「常野」という不思議な一族が登場する長編小説。
穏やかな田舎の情景と真摯な人々がでてくる話だけれど、そこに、戦前の厳しい自然と戦争の影がゆっくりと近づいてくる切ない作品。

 『蒲公英草紙』は、主人公である峰子が書いている日記。おっとりとした峰子が美しく、もうもどることができない少女時代を回想している。
 時は日露戦争前か、日本が世界に立ち向かい、血気と不安が広がる時勢。東北の小さな農村で、その村を支える槙村家には、一人娘・聡子がいた。体が弱く、外出もできない彼女の相手を峰子はすることになった。旧家のお嬢様で、体が弱い聡子であるが、ひがんだところはいっさいなく、聡明で優しく、そして美しい。峰子は、聡子や、その兄の廣隆、画家の椎名や永慶などと美しい田舎でゆっくりとした時間を過ごしている。
 そこに「春田一家」が槙村家の客人として現れる。穏やかだけど、どこか常人とはなにか違う秘密を隠しているような不思議な一家。『光の帝国』を読んでいれば分かるが、彼らこそ『常野一族』である。春田一家は人の記憶・歴史を「しまう」特殊な能力を持っている。どうやらサイコメトリー的な能力も持っているようだ。
 最初はその能力を隠している彼ら。しかし、不思議な出来事が起こるなか、槙村家と「常野」、そして聡子と常野には大きな関係がわかってくる。

 「常野」という超能力的な力を持つ人々が出てくる話だけれど、おもしろおかしく力を発揮して活躍するはなしではない。人の悲しみを和らげる力でもあるけれど、世間の風当たりが強かったり、厳しい役目を負っていたり、切ない場面が多い。
 幸福なときは続かない。戦争はそれを奪う。悲しみのふちにいる主人公はその後力を取り戻せただろうか?

「パラレルワールド・ラブストーリー」


この作品は、「ラブストーリー」というライトなタイトルがついているけれど、非常に不可解で、そして怖くて、悲しい話だ。主人公達は「脳」「記憶」を研究している。フィクションとはいえ、専門的な理系用語が並ぶが、根底には恋情、嫉妬、友情などの人間臭い感情がある。そしてミステリーは「殺人事件だけじゃない」と改めて感じさせられる作品だ。


序章、主人公の敦賀崇史は、親友の三輪智彦からはじめて恋人を紹介される。二人は中学からの親友で、今はコンピューター大手のバイテック社に入社し、二人とも2年間MACという専門学校で研究をしている優秀な若者である。親友にようやく恋人ができたことを素直に祝福する崇史であったが、その女性が、電車で気になっていた女性だったことが分かり、驚くほどの嫉妬の念に襲われてしまう。

本章に入ると、読者はとまどうことになる。三輪と交際しているはずの麻由子と崇史が同棲しているのである。MACを出て、バイテックで正式に働き出したところを見ると1年後のようだ。これだけならば、1年の間に何らかの事件で三輪から麻由子を奪ったのだと予想されるけれど、そうではない雰囲気が漂う。崇史は「三輪」という存在をなぜか忘れていたのである。それに気がついた崇史は、次々と記憶に違和感を感じ始める。

一方「SCENE」で始まる項は、MACに通い、三輪と麻由子が交際する序章の続きのようである。二人の仲に崇史は、日に日に高まる嫉妬に悶絶する。ダメだと思いながらも、三輪に嫉妬し、麻由子に近づきたいという気持ちは抑えきれない。この、3人の日々や、脳に関する研究をする場面が描かれている。脳の研究では三輪は「記憶を差し替える」研究を進めているようだ。

 そしてもう片方の、「1年後」の崇史は、この読者が直前に読んだ3人のエピソードの断片を思い出して困惑する。それは麻由子と自分が交際していたのではなく三輪と麻由子が交際していたような情景なのだ。
 本当は麻由子と三輪が交際していたのか?それならなぜ今麻由子と自分が?三輪はどうなったんだ・・・?

 この二つのシーンが、SFのような並行した世界なのか、どちらかが夢なのか、1年の間に何かが起こった過去と未来の話なのか。読者にはどういう展開が起こるのか、どんな真相があるのか大きな謎として襲ってきて引き込まれるのだ。

 当然、この真相には「脳の研究」が関わってくる。真相にだんだん近づく崇史と、それを拒もうとする見えない何か。それがなんだか分からないから、うっすら恐怖を感じる。
 そして、最後は3人の恋愛感情のすれちがいの果てに起こった、悲劇的な真相が分かるのである。

 東野圭吾さんはすごいと思う。「ガリレオ」シリーズなどの推理小説もあれば、「白夜行」などの本格長編ミステリもあり、「手紙」のような感動作品もあり、「怪笑小説」のようなお笑い小説もあり・・・。『THE推理小説』もかけるし、人間のエゴやぐちゃぐちゃしたところまで表現したミステリや、そうでない作品まで書いてしまう。
 まだまだ読んでいない作品ばかりだけれど、すでに色々なテイストの作品を読んだような気がする。ここまでライトに読めるのに面白い作品ばかり書く人もすごい。

「オーデュボンの祈り」

閉ざされた島で生きていた未来を予見するカカシは何を祈っていたのか・・・。


伊坂 幸太郎
Amazonランキング:727位
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 本作は伊坂幸太郎氏のデビュー作品。デビュー作とは思えないほどのオーラを放っている。

 話は、仙台沖合の誰にも知られていない島に、コンビニ強盗に失敗し、極悪な警察から逃げだした伊藤が助けられて連れてこられたところから始まる。島は江戸時代の終焉時に鎖国をすることになり、轟という男の連絡船が外界とをつなぐだけで、誰も外に出たことはない。伊藤は100年ぶり・2人目の記念すべき訪問者である。
 驚くべきことに、島には「優午」と呼ばれるカカシがおり、100年前から島にいて、しゃべること、未来を見通すことができるという。しかし、後に真実を伝えることはあっても、めったに未来を人々に教えることはない。この知恵者であるカカシを島民は慕っている反面、悲劇を教えてくれないことで複雑な感情も持っている。
 伊藤が、カカシに謎のアドバイスを受けた翌日、カカシは何者かによりバラバラにされ「殺されて」しまう。誰がなぜ案山子を殺したのか。カカシはなぜ自分の死を予知しなかったのか、もしくは誰にも伝えなかったのか。島内には衝撃が走る。 
 島には独特のルールや変わった人物がたくさんいる。たとえば「桜」という男は、詩を読み、花を愛でるが出会った悪しき人物は容赦なく射殺する。「桜」の射殺は殺人にはならず、天災などと同じくしかたのないことであり、島のルール・法律のようなものだという。
 田舎の長閑な時間の中、変わった人物や、その謎の行動、「桜」による殺人などに出会いながら、伊藤はカカシによってまかれた種から、人々と島に隠された多くの謎、そしてカカシの死の真相と彼の祈りをを見つけ出していく。

 誰かが殺されて、「探偵役」もしくは刑事が誰が犯人か、どうやって事件が行われたかを探っていくのが普通のミステリだとすると、伊坂さんの作品は色々な意味でそれを超えている。
 カカシの殺人事件という突飛な事件が根幹ではあるけれど、それぞれのキャラクターが持つ行動や言動すべてが、ばらまかれた絶妙な「伏線」であり、カカシの謎だけではなく、人々の隠された真実まですべて解き明かされていく構造になっている。これがほんとうにうまいのだ。伊藤はその間を歩いていて、だんだんとその真実に近づいていくだけなのだ。

 島の事件と並行して、仙台では伊藤を追っている警官・城山がいる。城山は警官という肩書きをかぶった一番あってはならない凶悪な人物である。人を精神から崩壊させ嬲り殺す殺人犯であり、レイプ犯である。読んでいるだけで怒りがこみ上げる人物だ。彼が伊藤の元恋人に目をつけ、だんだん近づいていく。非常にスリルのある場面である。もちろんここにもカカシのまいた伏線が絡んでくる。
 この城山や島内で「桜」に殺されるレイプ犯など、犯罪を犯す若者たちに対する憤りが溢れているもの特徴。それは、犯罪はいけない、悲しむ人がいる・・・という風に道徳を訴えているのではない。ただ、作者はそういうものが許せないんだろうなという感覚が伝わってくる。この作品で言えば、動物の生態をぶち壊す人間への警鐘まで感じられる。普通のミステリでは人が死ぬことがファクターであるため、そういうメッセージ性は薄いけれど、伊坂氏の作品にはなんとなく作者の感情が見えてくる。

 そして、もうひとつ好きなのは登場人物のさっぱりしたキャラクターや、洒落た会話だ。短い断定で続く会話は小気味よくて、詩的でクールなのだ。特にたまに出てくる、伊藤の祖母なんかはめちゃくちゃサバサバしていて格好良い。
 伊藤のような島外の人間がもたらしてくれる「島にかけている何か」が何かという謎も、気になる点で、それが分かった場面は爽快である。

 この作品も、ミステリーとしての設定が絶妙な上に、おもしろさ以上の感情を残してくれる素晴らしい作品だった。

「あなたの会社が90日で儲かる!」



 お仕事の関係でビジネス本が続いています。
今回は、経営コンサルタント神田昌典氏の本。
「感情マーケティング」とあるけれど、情に任せて売るというものではなく、お客が自分の商品に興味を持つポイント、購入したいと思うポイントとなるような感情のスイッチをうまく見つけて利用するかというようなことだ。
 筆者は「MBAを取得したコンサルタント」であるけれど、そういう資格や経歴は全く役にたたないと言い放つ。ビジネスは実際にやらないとわからない。この本は全体を通して神田氏が体験してきた仕事や、コンサルしてきた事例も踏まえられている。
 ビジネスの本質は、最初は見込みでいいので顧客を集めることで、次に繰り返し買ってもらうことと述べている。継続して商品を買ってもらうにも、口コミなどで広めてもらおうにも、最初の顧客が集まらなければ話にならない。実はこの当たり前のことができない。それを乗り越えるための広告宣伝の使い方と、営業としてのお客さんに対するスタンツが説明されている。
 すぐに自分の仕事とリンクできてとても読みやすい。そして非常に参考になる必読書だと思う。

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「憑神」

落ちぶれ武士が祈ってしまったのは、不運の神様だった!次々に襲い掛かる不幸にどう立ち向かうのか!?


浅田 次郎
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 幕末の江戸。別所彦四郎は、将軍家を代々守る御徒士の別所家に生まれた次男。格上の井上家に養子に入り、一男をもうけたものの、妬みにあい、離縁させられてしまった。今は兄の住む実家で居候し、離れで実母とともに無役の日々を過ごしている。
 妻子と離れ、職もなく、日々を嘆く彦四郎は、見覚えのない祠を発見する。そこに出世するように拝んだのだが、「三巡稲荷」と呼ばれるその祠は、拝んではいけない、霊験あらたかな不幸になる祠だった。貧乏神に家財を吸い尽くされ、疫病神に死ぬぎりぎりまで苦しめられ、そして最後には死神が憑くという、最悪の運命が待っていた。

 映画にもなった、浅田次郎さん作の時代小説。
 不運に見舞われる武士の顛末はコミカル。最初は自堕落で情けないと感じられた彦四郎だけれども、読んでいくうちに、幕末の武士がとうに失ってしまった、本来の武士の生き様を持ち続けている男だということが分かってくる。武士らしい生き方は、それが平和ボケで廃れてしまったために政権が危うくなったのであるが、時代にすでにそぐわない生き方になってしまっている。武士として、最後に彦四郎がとる行動は必読の場面である。

 これは、楽しく、ハートフルな話で、時代物を読まない人や、本が苦手な人でもおもしろく読める本だと思う。

   

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4040

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4040です*
最近のお気に入りは、梨木香歩さん、森博嗣さん、伊坂幸太朗さんです。
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